- メディアパル
- A5判、122ページ
- ISBN 978-4-89610-086-0
- 価格 1,600円
評者は「ロマン」が大嫌いだ。特に星空のロマンがことのほか嫌いである。なにしろ、プラネタリウムに恋人と行ったことは無い。恋人というのを決めたときには、すでに解説員だったから。なので、世に言う白いカバーがけのロマンス・シートに特定の人と座ったことが無いし、星空の下で、ロマンチックな気分になったことが無い。恋人=今のおかあちゃんは結婚後、評者の観測助手になって、○○星より××光階暗く、△△星より□□光階明るいと記録していた。そこには厳格な事実だけあってロマンは無かった。恋人がプラネタリウムにおいでになったときは、頻繁にやたらと明るくしたものだった。神話に登場する化け物が大嫌いで、従ってギリシア・ロマンは筆者には遠い存在だった。
だが、世の中の人の感じ方はどうも違うらしい。天文学者ですら、宇宙にロマンを感じますと言ってはばからない。一つそういったロマンとやらを研究してみたくなったというのが、本書に対する評者の偽らざる感想である。いや、感傷である。ロマンとはなにか。なにがロマンチックなのか。人は宇宙を、どうしてロマンチックに感じ、畏れ、駆り立てられるのだろうか。
連詩という詩の形態は日本で発明されたものだという。この本に寄稿されておられる詩人大岡信氏によれば、平安時代にあった連歌や連句の現代版だそうだ。そして、宇宙連詩を小・中学校に広めようと努力なさっている方々を、評者は知っている。宇宙をそれぞれの方々の言葉で感じることが、たぶんロマンなのだ。
ロマンの実在を深く信じている方はもちろんのこと、信じていない方も、この本を一度熟読してから、ロマンについて語りましょう。