- まつやま書房
- 四六判、237ページ
- ISBN 978-4-89623-054-3
- 価格 1,680円
主人公千葉歳胤(ちばとしたね)は西武線沿線飯能周辺の虎秀(最寄駅は東吾野駅)出身。その西武線の入り口・池袋の書店で、本書を見つけたときは、場所柄もわきまえず小躍りしてしまった。だが、レジに並んで順番を待つ間に本書を覗き見したら、今度はビックリしてしまった。こんなすごい内容の本が一般書店で販売されるとは。本書は一般書ではなく研究書なのだ。しかも研究者を研究した本なのであり、有名人の伝記ではない。著者が千葉歳胤の同郷者だったから研究したとしか評者には考えつかないのだ。
著者は大学で電子工学を勉強され、計測や通信の機器開発に当たった技術者だが、尺八の歴史を研究して本を出版しているという異色の方。本書の内容も並の研究ではなく、日晷(にっき、太陽光の影のこと)、盈虚(えいきょ、月の満ち欠けのこと)、恒気(二十四節気を求める一方法)、歳実(太陽年のこと)、転終(朔望月のこと)、暦元(暦の起点)などという、現在では死語になった天文用語がごろごろ登場する。本書のおかげで評者の「天文死語辞典」は収録語数1200を超えた。そんな本を評者のたった一つ年上の著者が執筆するには、相当な年月と熱意とが必要だったに違いない。しかもかな混じり漢文ならよいほうで、ほとんど漢文を読む気でないと、我が国の暦学書をマスターできない。
もしあなたが日本暦学史や和算史をマスターしたいなら、ぜひ本書を入手すべきである。すると、西洋とはまったく異なり、日本でなぜ天文学が実学としてしか発展しなかったかが、よく理解できるはずである。それともちろん、千葉歳胤という学者が今まで以上に暦学史の中で評価されねばならない理由がわかるはずだ。
それにしても日本語は難しい。特に江戸時代の文献を読みこなすのは…。