新宿西口の某有名書店理工学書コーナーで発見した珍書。というよりキット。キッズ向けをかなり意識しているが、これは堂々たる大人向けのモノだ。空間認識がほぼ無い小学校低学年ではまず理解が困難。だが、宇宙空間認識が是非とも必要な大人にとっては、極めて有益なキットである。税抜き1200円という安価で早速家に帰って工作した。ものの十数分で完成。以前から評者もステラナビゲータやミタカを使っているときに、こんなモノがあったらいいなと願っていた。
古代人が考えていた宇宙観は、すべて恒星が地球から等距離にあるというものだった。それが年周視差の発見によって、今ではベガやアルタイルよりデネブは約100倍も遠いことが判っている。その上、デネブは見かけ上、他の2星より明らかに暗いが、本当の明るさは数万倍明るいという。宇宙の実相は見かけでは判らないのだ。北斗七星を見て柄杓みたいだな、否フライパンだな、熊の尻尾だなと表現するだけではダメなのだ。ステラナビゲータでは、約10万年前、約10万年後の北斗七星が現在と全く異なる並び方になることが判るが、これも固有運動の相違を理解しないとならない。だが、距離の相違も加えて理解するには、このキットに勝るモノはない。
おそらく著者らは将来的に、オリオン座やその他の星座、ヒアデス星団などの企画販売をお考えになっていることだろうが、一見マニアックと見えるこのキットが多数の書店の書棚に並ぶことを、評者は想像したい。カルチャーセンターで、評者は受講生に紹介させてもらっている。