月刊ほんナビ 2024年2月号
📕 「2024年の天文情報 準備は万端⁉」
紹介:原智子(星ナビ2024年2月号掲載)
この記事を読んでいるみなさんは、すでに新年を迎えたところだろうか。ただいま原稿執筆中の筆者は、11月から12月上旬に出そろった2024年版の天文情報関連本を入手したばかり。それぞれのページをめくりながら、まもなく訪れる天文現象に思いを馳せているところである。今回は天文ファンにとって欠かせない情報を得る様々なデータブックを紹介しよう。使い慣れた定番以外にも、たまには違う資料を手に取ると新しい発見があるかもしれない。
まずは、国立天文台が編纂する『理科年表2024』から。1925(大正14)年以来(昭和19・20・21年版を除く)自然科学の全分野を網羅して発刊する、世界的にもユニークなデータ集。2024年版では、2022年に国の重要文化財に指定された『星学手簡』を暦部で紹介している。高橋至時と間重富の間で交わされた書状を中心に集成した、「上」「中」「下」3巻からなる江戸時代の書物だ。また、物理/化学部では2022年の国際度量衡総会で決まった新たな「10の整数乗倍を表すSI接頭語」(10の30乗「クエタ」、10の27乗「ロナ」、10の−27乗「ロント」、10の−30乗「クエクト」)を掲載。地学部では最新の測量技術により、日本の島の数がこれまでの倍以上の1万4125島であることがわかったという。
『天文年鑑2024年版』も、1928(昭和3)年に創刊された老舗のデータ集。2024年に起こる天文現象の予報と、2022年から2023年に観測された結果を掲載している。執筆は、国立天文台などの研究機関とプロの観測者・研究者のほか、各天体観測のエキスパートであるアマチュア天文家も担当。『理科年表』に比べ天文分野に特化しているので、“天体観測の手引書”として利用する観測派の人が多いだろう。
次は、年鑑を2冊。『アストロガイド 星空年鑑 2024』は、当誌を編集するアストロアーツが手がけたガイドムック。オールカラーの大判誌面に、わかりやすい星空案内と、見やすい図解が載っている。「夜空を眺めて楽しみたい」という天文初心者から、「注目の天文現象を見逃したくない」という天文愛好家まで、それぞれの希望に充分に応える内容。付録のDVD-VIDEO/ROMには、「2024年に接近する二大彗星」や「VTuber星見まどかの系外惑星解説」、さらに「ウクライナの星空番組」など5本の動画を収録。シミュレーションソフト「アストロガイドブラウザ」(Windows版、Mac版)も利用できる。
さて、約1年前に亡くなった藤井旭さんは長年にわたり様々な天文解説書を著し、多くの人々(とくに子供たち)を天文の世界へ導いてきた。そんな人がこれまで頼りにしてきた『藤井旭の天文年鑑』が、2024年版も発刊された。制作に関わったのは、彼の意志をつなぎたいと願うスタッフと、監修をひきうけた相馬充氏。「より多くの人に星を身近に感じてもらい、気軽に星に親しんでほしい」という藤井さんの願いは、今後も変わらずに受け継がれてゆく。
最後に、手帳を2冊紹介する。『天文手帳2024』は、1977年創刊のおなじみの手帳。スマホアプリで調べたりメモしたりできる時代でも、やっぱりペラペラとページをめくり目に飛び込んでくる天文情報にワクワクしたい。今年はスピン(しおり紐)が復活。そして、本体表紙の素材とデザインがマイナーチェンジしている。新しい天文手帳を買った人のなかには、使い終わった旧版を大切に保管している愛用者も多いだろう。自分の天文活動が“歴史”になり、毎年積み重なっていく。
2016年版から出版されている『天体観測手帳2024』は、先述の『天文手帳』と縦の長さは同じだが横幅が若干大きい、いわゆる「文庫版」サイズ。そして、最大の違いはカラーページを多用したビジュアル手帳であること。表紙カバーには「2024年は大彗星と探査機のドリームイヤー」と書いてあり、「MMX火星衛星探査機打上げ」などの宇宙開発情報も掲載している。
ここまで「データ集」「年鑑」「手帳」を紹介してきたが、みなさんはもう入手し、2024年の天文ライフを楽しむ準備は整っているだろうか。ちなみに、2023年は日本が太陽暦に改暦してから150年という節目の年だった。次の一歩を踏み出す2024年の星空が、世界中の人にとって平和で安全なものであってほしい。