月刊ほんナビ 2024年9月号

📕 「楽しく読んで夏休みの調べ学習の手助けにも」

紹介:原智子(星ナビ2024年9月号掲載)

夏休みの子供たちは、家族と海や山に出かけたり、花火や祭りを楽しんだりして、“いつもと違う夜”を過ごすことがあるだろう。そんなときは、親子で夜空を眺めてみよう。暗い場所ならたくさんの星が見えるし、お盆のころならペルセウス座流星群の流れ星が見られるかもしれない。街明かりのあるところでも、月や明るい星(夏の大三角)を探す楽しみ方がある。

『ぐんぐん考える力を育むよみきかせ うちゅうのお話20』(Amazon)

そして、当コーナー担当者としてはなんと言っても、星や宇宙の本を読むことをお勧めしたい。夏休みの調べ学習(自由研究)の手助けにもきっとなるはずだ。まずは、小学校低学年から読める「かがくえほんシリーズ第6弾 ぐんぐん考える力を育むよみきかせ」の『うちゅうのお話20』。なんとこの1冊に、地球・太陽・月・惑星・恒星・流星・宇宙開発などをテーマにした20の物語(絵本)が詰まっている。それぞれユニークなキャラクターが登場して、様々な物語を繰り広げながら宇宙について紹介していく。わかりやすい言葉を使っているから、読み聞かせなら3歳から大丈夫。「お話」の後には専門的な図解を用いた詳しい解説が載っていて、さらに深く学ぶことができる。絵もストーリーもバラエティーに富み、子どもも大人も「次はどんなお話かな!?」とワクワクしながらページをめくれる。

『地球発!アストロアカデミー ~うらぎり者はだれだ⁉月からの大脱出!~』(Amazon)

次は、マンガ好きならきっと夢中で読んじゃう『地球発!アストロアカデミー』。宇宙を自由に航行できる宇宙探検家を育成する学校「アストロアカデミー」の新入生7人が、月から地球へ帰還する冒険小説。個性的な仲間たちが特技を合わせて脱出をはかるが、途中で裏切り者がいるとわかる。ゲームを解くようなテンポの良い展開と、ゆうち巳くみ氏のイラストが子供心をくすぐる。著者の天川栄人氏は当誌2023年10月号に登場し、著書「クガコー天文部シリーズ」や自身の天文歴について語ったこともある。今作は、エンターテインメントたっぷりのSF児童書。

『元素楽章 擬人化でわかる元素の世界』(Amazon)

さて、宇宙の誕生とともに生まれ、すべての源になったのは元素だ。そんな元素の性質や働きについて、ユニークな表現で教えてくれるのが『元素楽章』。現役理系大学生の著者が2020年から取り組んでいる学習コンテンツ「元素擬人化プロジェクト」の書籍。科学的な「元ネタ」をベースに、そこからインスピレーションを得たイラストと、元素の特性を表したストーリーでまとめたファンタジー。著者いわく「この本のコンセプトは『元素の攻略本』」。巻末には、ニホニウム合成グループリーダーの森田浩介博士と、フレロフ原子核反応研究所のユーリイ・オガネシアン教授のインタビューも載っている。化学が好きな人も苦手な人も、それぞれの楽しみ方(学び方)ができそう。天文好きとしては、第4楽章「原初の者」の「起源を巡る 星の旅」が見どころか。

『知れば得する宇宙図鑑』(Amazon)

ここまでビジュアルの目立つ本を紹介してきたが、次の2冊は天文に関心のある中高生や大人が読んで学ぶ教養書。『知れば得する宇宙図鑑』はタイトルに「図鑑」と付くように、美しいカラー写真が豊富に掲載されている。内容は、古代の天文観測や天文史、太陽系と銀河系の新情報、「ダークマター」「ダークエネルギー」「ブラックホール」などホットな天文用語の解説、そして宇宙開発など、一通りの天文情報を網羅している。この機会に「大人の自由研究」としてこの本を読み、子供の隣で学ぶ姿を見せるのもいいかも。

『眠れない夜に読みたくなる宇宙の話80』(Amazon)

最後の『眠れない夜に読みたくなる宇宙の話80』は、登録者数27万人のYouTube宇宙科学チャンネル「宇宙 すずちゃんねる」の朗読本。そう、ここに書かれている話題は、読むだけでなくパソコンやスマートフォンで聴くこともできるのだ。すでに多くの再生数を重ねている「2億年後の地球はどうなっているのか?」や「木星の恐怖と魅力を体感してください」など、人気のコンテンツを80の話に再構成して書籍化。易しい文と優しい声で語られる宇宙の話は、心が自然に癒やされる。まさに“の暑さで眠れない夜に”目で読んで耳で聴いて、宇宙を漂うような気持ちになれる本。

▶ 「月刊ほんナビ」バックナンバー

▶ 「天文書評&新刊情報」トップページ