冬の夜空は1等星が多く、華やかで美しい。「この星空を写真にして残したい」と思う人も多いのでは。今回は、自分で天体写真を撮影するための手助けをしてくれる書籍を集めた。
「驚きの星空撮影法」は、赤道儀を使わずにデジタル一眼レフカメラと三脚だけで、美しい星空や明るい星雲星団を撮影する新テクニックを紹介する解説本。「超固定撮影法」と名付けられたこの方法は、天文初心者にとって使いこなすのが難しかった赤道儀がいらないので、誰でも手軽に天体写真撮影にチャレンジできるという。赤道儀(とそのバッテリー)が不要になれば、機材がコンパクトになり重量も費用も削減できる。そうなったら、車を使わずに自転車や電車で天体撮影に出かけることが簡単になり、移動手段の限られる人や、体力に自信のない人も撮影活動の幅が広がりそうだ。また、赤道儀がいらないということは、北極星の見えない南半球など、世界中どこでも同じ機材で撮影できるということだ。こんなふうに天体写真の撮影方法が進化したのも、個人がパソコンで画像処理できる時代になったからだといえる。赤道儀テクニックはいらないが、そのぶん画像処理テクニックが仕上がり具合に大きく関わりそうだ。
新しい写真撮影方法のなかで、最近とくに注目を集めているのがタイムラプス撮影だろう。「タイムラプス動画撮影テクニック」では、ロケーション選びから機材準備や撮影方法について、作例を挙げながら具体的に紹介している。しかも、ワンランク上の作品にするためのテクニックとアイデアも指南してくれる。さらに、動画化して公開するための、編集制作アプリケーションの選択や動画編集作業方法までも、多くの図を用いてわかりやすく掲載。これからが撮影シーズンとなるオーロラのタイムラプス撮影方法も扱っている。
ここから紹介する書籍は、具体的な撮影テクニックを教えてくれるものではないが、その美しい作品が“天体写真を撮影するインスピレーション”を与えてくれる写真集である。一冊目は「写真でつづる四季の星空」。春は桜、夏は天の川、秋は夕暮れ、冬は雪など、四季折々の風景を星空とともに撮影している。見ているだけでも充分楽しめる星景写真だが、だんだん「自分なら近所のあの風景といっしょに撮ってみたい」という思いがわいてくる。あるいは、普通なら天体写真の邪魔になりそうな雲や街灯りも「こんなふうに撮影すれば趣のある星空になるんだ」と思わせてくれる。
同じく、スカイスケイプフォトブックシリーズの「星空風景」と「月」も、美しい星や月の作品を楽しみながら、写真撮影に対する刺激を与えてくれる写真集。このような天体写真集を眺めていていつも思うのは、探査機が撮影した画像と違って“ 人間が撮影した星や月”からは、撮影者の心が伝わってくるということ。「星空風景」には、自然はもちろん街並みや人物など、星以外のものも多く写っている。星空の下で生きている人間や、星を見上げている人間がいるからこそ、宇宙の雄大さが真に迫ってくるのだろう。そして「月」には、色も形もさまざまに変化する月の魅力がギュッと詰まっている。夜空で輝く月、昼の青空に浮かぶ月、赤く見える月、海から昇る月、山へ沈む月など、月は本当にいろいろな姿を見せてくれる。また、すべての月齢の写真も収められている。どちらもコンパクトサイズの本なので、身近に置いていつでも気軽にページをめくって楽しみたい。
最後は「NASAが撮った宇宙の絶景」。色鮮やかな星雲やさまざまな姿をした銀河など、私たちの目ではなかなか見えない宇宙の姿をとらえたらえた画像集。「ISS から見る地球」の章では、「地球も大きな宇宙に浮かぶひとつの天体だった」と気づかせてくれる。宇宙はなんてカラフルなんだ!とつくづく思う。