Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2015年9月号掲載
子どもと一緒に見上げよう

いつもは早寝早起きをしている子どもたちも、夏休みにはちょっと夜更かしをして星空を楽しんでほしい。きっと、今までにない感動や発見を味わえるはずだから。今月は、そんな子どもや天文初心者、あるいは子どもと一緒に星空を眺める大人たちにおくる本を紹介しよう。

まずは、『これだけ!宇宙論』 から。タイトルに“宇宙論”とついているが、相対性理論などの難しい内容は登場せず、星空を楽しんだり宇宙を理解するための基礎を教えてくれる入門書。初めて夜空を眺める人がすぐに使えるよう、シンプルな図や写真を載せてわかりやすくまとめている。第1章の「星空からの出発」から始まり、第2章の「地球と月」、「太陽」「太陽系」とだんだんスケールアップし、やがて「銀河系」「銀河宇宙」へ広がり、最終章の「宇宙の果て」で宇宙を俯瞰的に見ることに挑戦する。あえて応用やプラスアルファの情報は載せず、ポイントをひとことで紹介する「これだけ」、平易な言葉で説明する「解説」、キーワードを復習する「まとめ」の3項目で成り立っている。まさに、“これだけ”あれば、宇宙への第一歩が踏み出せる。

次の『げっしょく』 は、今年4月に起こった皆既月食を観測するための手引きとして発行された絵本。著者は天体写真家の中西昭雄さん。天文ファンのイラストレーター、えびなみつるさんの絵でしっかりと月の基本情報が紹介されている。今年の月食は終わってしまったが、これから2050年までに起こる月食情報も載っているので、まだまだ役に立つ。この本を参考にして夏休みの晴れた夜は月を観察し、形の変化や月の出が遅くなることなどを自分の目で確認してほしい。

さて、星や宇宙のことを知りたくなったら「プラネタリウムに行ってみよう」と思う人が多いだろう。日本には数多くの館があり、それぞれ工夫を凝らした投影を行っている。『全国プラネタリウムガイド』 ではプラネタリウムの歴史や仕組み、そして日本全国256の館と海外の主要な館の情報を掲載している。また、漫画家の松本零士さんや宙ガールタレントの篠原ともえさん、プラネタリウム投影機や番組を制作する人たち、望遠鏡メーカーや玩具メーカーの天文担当者などさまざまなジャンルの人が寄稿しているコラムが随所に挟まれていて、それぞれの立場の人の“天文観”を読むのも興味深い。夏休みに旅行をしたら、その土地のプラネタリウムへ行ってみるのも面白いだろう。思いがけない発見や出会いがあるかもしれない。

そんなたくさんあるプラネタリウムの中で、今年60周年を迎えた仙台市天文台の解説員が、天文台の歴史や宇宙の魅力を伝えるのが『ようこそ星めぐり―せんだい天文台だより』 。毎月の星座解説とともに、仙台天文台でその季節に行われた出来事や星にまつわる豆知識などをエッセー風に紹介している。「3月の星空」では東日本大震災の日のことや、その夜の星空を見つめた多くの人の目と心を描いた番組『星空とともに』についてもふれている。七夕の街らしい、温かさを感じる読み物である。

さて、次の2冊は筆者が当コーナーの担当になって初めてとなる、漫画の紹介だ。天文をテーマにした漫画はいろいろ出版されているが、この2冊はともに江戸時代を舞台に幕府天文方や暦に関わる人々をテーマにしている。『天地明察』(1)  (2)  (3)  (4)  (5)  (6)  (7)  (8) は冲方丁さんが2009年に執筆し、2012年に映画化もされた同名の時代小説のコミカライズ。渋川春海の改暦に懸けた物語だが、あらためて漫画というビジュアルで読むと、碁盤や星の並び、算額の問題図などを視覚的に把握することができてわかりやすい。人間関係や登場人物の心情もとらえやすくて、これなら小学校高学年くらいでも読破できるかもしれない。最新刊は5月に発行された8巻、月刊『アフタヌーン』で連載中。

もう1冊の『猫暦(ねこよみ)』(1)  (2) は江戸の町を舞台に、星を見る人(天文家)になりたい女の子とその婚約者だと名乗る猫(妖怪)が繰り広げる物語。彼女を取り巻く大人には、伊能勘解由(忠敬)や羽間(間)重富など魅力的な天文関係者が多く、天文情報も本格的だが、少女が妖怪の力で大人に変身するあたりは、ファンタジーの要素も含んでいる。最新刊は5月に発行された2巻、『お江戸ねこぱんち』で連載中。

書籍や漫画を読んだりプラネタリウムに行ったりと、いろいろな角度から天文情報を得たら、次は本物の夜空に目を向けてみよう。