Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2015年11月号掲載
宇宙を見る、撮る、広める

“宇宙の絶景”に関係する書籍を紹介しよう。まずは、ズバリ『星降る絶景』 。星ナビ連載「ビジュアル天体図鑑」を手がける沼澤茂美氏が、これまでに撮りためた多くの星景写真から選りすぐった作品を収めた写真集。「星降る絶景」「天文台の空」「故郷の星空」「天文現象」の4章に、煙のような白い天の川や異国情緒あふれる星空、そして日食や彗星など、まさに「一度は見てみたい」風景を紹介している。長時間露光によるホタルの乱舞や棚田の星空など、日本ならではの風景も味わいがある。美しい写真を見て「自分も撮影してみたい」と思った人には、巻末の撮影データが参考になる。

『星月夜への招待』 は、同じく星ナビ読者にはお馴染みのKAGAYA氏による写真集。やはり世界各地の夜空が紹介されているのだが、こちらはページをめくるたびに「まるでイラストみたい」と驚かされる。星や月の鮮やかさだけでなく、前景に山や湖や木や草をどのように入れるかも、画家らしくしっかり計算されている。何冊かの画集を出してきたKAGAYA氏にとって初めての写真集になるが、彼のセンスで風景を切り取るとそこに物語が生まれ、音まで聞こえてくるようだ。

2013年に本格始動した、南米チリにあるアルマ望遠鏡の成果を紹介する『アルマ望遠鏡が見た宇宙』 。「銀河の誕生の謎」「惑星系の誕生の謎」「生命の誕生の謎」に挑み、66台の電波望遠鏡によってとらえた神秘的な画像は、もはや「美しい」という言葉がふさわしいのかわからなくなるほど、はるか彼方のかすかな存在だ。“絶景”という単語の指す意味が「美しい景色」よりも、「絶境の景色」に思えてくる。ちなみに、望遠鏡が設置されているアタカマ高原の自然もかなりの絶景だ。そのほか、プロジェクトチームの紹介など、これ一冊で「アルマ望遠鏡計画」の基本がわかる、国立天文台公式ブック。

天文ファンに限らず多くの人が「一度は見てみたい絶景」といえば、オーロラだろう。そのオーロラを世界中に生中継するサイト「Live!オーロラ」を立ち上げた古賀祐三氏の自伝が『僕がオーロラを世界にシェアできたわけ』 。さまざまな試行錯誤の末、配信に成功するまでのドキュメントが綴られている。このプロジェクトにかかわった人たちにとっては、彼の熱意そのものが“絶景”だったのかもしれない。

ところで、誰でも初めて自分で撮った天体写真が「自分だけの絶景」に見えるのでは。『驚異!デジカメだけで月面や土星の輪が撮れる』 は、2000mm相当の画角で光学83倍の超望遠ズーム撮影が可能なニコンCOOLPIX P900を使ってより優れた天体写真を撮るためのハウツー本。カメラ能力を最大限に発揮させる設定や撮影条件を、豊富な作例を用いて詳しく教えてくれる。なお、印刷版は本文がモノクロなので、撮影画像をフルカラーで見たい人は電子版がおすすめ。

最後は、DVD BOOKの『宇宙の神秘』 を紹介しよう。ディスカバリーチャンネルのサイエンスシリーズから、銀河系について解説する「Cosmic Collisions, Galaxies」(45分)を収録。銀河の壮大なドラマを動画で見せてくれて飽きさせない。