「宇宙人」といえば長らく、SF小説や宇宙映画など娯楽シーンに登場する架空設定であり、そうでなければエセ科学やトンデモ本のたぐいだと思われてきた。しかし現在は「アストロバイオロジー」というひとつのサイエンスジャンルとして確立し、「地球外生命を探ること」は最先端の研究分野になった。
その学術的分析を真正面から解説するのが、タイトルもずばり『アストロバイオロジー』だ。NASAはアストロバイオロジーを「生命の起源、進化、伝播および未来」と定義した。つまり“未来を探る”のがアストロバイオロジーなのだ。日本語に直訳すると、「天体の生物学」あるいは「宇宙の生命科学」となる。地球外生命の存在を探るためには、まず“生命の存在する地球”がどのくらい特殊なのか調べることから始まる。著者いわく「宇宙規模でみれば『地球だけが特別』という理由は特に見あたらない」。そもそも生命とは何か? 材料はどうできたか? どう誕生して進化するか? その答え(あるいはどこまで答えに近づいているか)が、この一冊に詰まっている。
ある研究分野が飛躍的な進歩を遂げる前には、成果が出ずに人知れず埋もれていった先駆者や研究テーマがあるだろう。それでも科学者は地道に苦労と努力を重ね、ときには外部からの障害を乗り越えて、研究結果を世に送り出す。地球外生命探しを続けてきた天文学者たちにも、多くのドラマがあったのだ。そんな最前線の研究者たちを科学ジャーナリストが取材し、生の声をリポートしたのが『五〇億年の孤独』だ。SETIプロジェクトを牽引し、やがて銀河系に知的生命が存在する確率の方程式を導いたフランク・ドレイク博士など、この本には多くの研究者の姿と言葉が収められている。五〇億年とは、地球における生命の存在期間を念頭に置いて付けたそうだ。その長い地球の歴史にとって、ほんの一瞬ともいえる半世紀ほどの間に起こった「アストロバイオロジー研究の進化」を肌で感じるノンフィクション。
『銀河系惑星学の挑戦』は、東京大学名誉教授で千葉工業大学惑星探査研究センター所長もつとめる著者が、朝日カルチャースクールで行った講座内容をまとめた新書。惑星科学の第一人者である彼が、自身の研究を通して地球外生命の可能性について迫っていく。
2012年には東京工業大学に地球生命研究所(ELSI)が設立され、昨年は自然科学研究機構にアストロバイオロジーセンターが誕生した。今後ますます研究が深まる分野であり、今回紹介した書籍のどれかひとつでも読んでみると、“これからの天文学”を感じることができるだろう。
「私(僕)もアストロバイオロジーを知りたい!」と思った小学生のみなさんには、『さがせ!宇宙の生命探査大百科』をお薦めしよう。「宇宙の生命探し」という目的に向かって、太陽系内の探査・系外惑星の観測・知的生命への呼びかけと探査の将来など、さまざまな角度から解説している。児童書としては初めて本格的に宇宙生命探査を扱った図鑑で、カラーイラストや写真をふんだんに使いわかりやすく解説している。各章の監修を鳴沢真也氏、長沼毅氏、松井孝典氏、井田茂氏、川口淳一郎氏がつとめ、総監修を自然科学研究機構長の佐藤勝彦氏が行っている。この夏休みにじっくり読んでみよう。
(紹介:原智子)