夕暮れ空に細い三日月を見つけたり、思いがけず美しい星空に出会ったりすると、「みんなに教えてあげたい」とか「誰かと感動を分かち合いたい」と思うことがある。星空には、“人と人を結びつける”引力(パワー)がある。
多くの人に星のことを教えてくれる場所といったら、プラネタリウムだろう。『星空の演出家たち』は、世界最大のプラネタリウムとしてギネス世界記録に認定されている名古屋市科学館を作り上げた人々の物語。“作り上げた”とは、1962年の開館や2011年の改装など“施設を作った”話と、開館以来現在も続く生声で語りをする“解説者(解説員ではないという)を作り続けている”話。そして、多くの天文ファン(ときには専門家)も作ってきた。そんな長い歴史と数々の裏事情が、同館の基礎を築いた故・山田卓氏のイラストとともに紹介されている。すべてのプラネタリウムファンはもちろん、将来プラネタリアンになりたい人にとっても興味深いテーマが盛りだくさんだ。
一方、『プラネタリウム男』は、投影機を作る技術者側の話。「メガスターシリーズ」などの開発を手がけた大平貴之氏が、幼い頃からプラネタリウム作りに励んできた半生を綴った自叙伝である。前書がプラネタリウムとお客さんに寄り添ってきた話だとすると、こちらは自分のこだわりに挑戦し続けてきた話。両方読めば、日本には多くのプラネタリウムがあり、施設の大小や運営の公私などに違いはあっても、それぞれに苦労や工夫を重ねていることがさまざまな側面から見えてくる。
次は、音楽で“宇宙”を表現するユニット「アクアマリン」のミマス氏によるエッセイ『君も星だよ』。副題の通り「合唱曲《COSMOS》にこめたメッセージ」がメインに語られているが、さらに世界を旅したコラムやお薦め本の紹介、そして歌の作り方まで、彼自身の宇宙(エッセンス)がこの一冊に詰まっている。音を伝えるということは心を伝えることで、心は場所(宇)も時代(宙)も超えるのだと改めて感じた。
最後は、宇宙のスポークスマンとしておなじみの的川泰宣氏が、各種新聞などに執筆した記事をまとめた第5弾『宇宙で育む平和な未来』。2012年12月から16年5月までの話題で、いずれも科学技術を平和な未来のために役立てたい気持ちがにじみ出ている。
(紹介:原智子)