人間とほかの動物の違いは、「なぜ」という“疑問”を持ち、答えを見つけようとするかどうかにあるのかもしれない。動物も「どうしたら餌を食べられるか」と“挑戦”はしている。成功したら、それを繰り返して餌を手に入れるし、失敗したらほかの方法で挑戦し直す。しかし、「なぜ失敗したか」とは考えていないように見える。なぜだろうか……と疑問を持つこと自体がもう“人間”なのだろう。先人たちも、「人間は考える葦である」「我思う故に我在り」などの言葉を残している。
今回は、そんな人間らしい思考ともいえる“疑問”をテーマに紹介しよう。まずは、さまざまな分野の疑問に次々答えてくれる『科学のあらゆる疑問に答えます』。イギリスの一般向け科学雑誌『ニュー・サイエンティスト』で1994年から続く人気Q & Aコーナー「ラスト・ワード」をまとめたもの。宇宙・物理・化学・生物にまつわる科学的な質問から、「ハチをキッチンから追い出す方法」「一つの曲が頭から離れないわけ」など生活に根づいた話題まで、興味をひく疑問がたくさん載っている。回答を寄せるのも読者で、科学好きの一般人から専門の研究者まで幅広く、ユーモアを含めた答えもある。あなたがこの本を手にしたら教科書のように始めから読むのではなく、まず目次の質問一覧を眺めて「自分も知りたい」と思うページを開いたり、「私ならこう答える」と考えながら読んでみてはいかがだろうか。きっと「疑問を持つことは楽しい」と感じるにちがいない。
『宇宙には、だれかいますか?』という疑問も昔から多くの人が抱いたテーマであり、最近では「アストロバイオロジー」という分野で扱われる研究だ。この壮大な問題に18人の科学者が、自身の研究内容を紹介しながらそれぞれの見解を示している。アストロバイオロジーの最先端を学ぶと同時に、科学者がどのように研究に臨んでいるかも伝わってくる。
天文ファンの中には基本的な物理学をしっかり理解している人もいると思うが、世間では物理学に苦手意識を持つ人が少なくない。『目に見える世界は幻想か?』の著者は大学で教養課程としての物理学講義を行った経験から、専門学生以外や一般の多くの人に物理の面白さや美しさを知ってほしいとこの入門書を書いた。数式や図表を用いず、「物理学が常識的な思考を破りながら進歩してきた過程」や「一つの成果によって次の問題という地平が現れる未知」を語り、物理学の世界を解いていく。サブタイトルにある「物理学の思考法」を知ることで、「疑問に取り組む思考法」を学ぶこともできそうだ。
『宇宙はなぜ「暗い」のか?』という問題は、昔から「オルバースのパラドックス」と言われてきた。もしも無限の宇宙に無限の星が輝いていたら、夜空は明るくなってしまうのか。近赤外線宇宙背景放射(近赤外線での宇宙の明るさ)を観測的に研究している著者が、「宇宙の明るさ」を軸に初心者でもわかりやすいよう天文学の基本を解説する。「宇宙の暗さ」を考えることで、「宇宙の始まり」を考える。
同じように宇宙の誕生から終わりまでを考える本だが、逆のタイトルでアプローチするのが『宇宙に「終わり」はあるのか』。ビッグバンの混沌からビッグウィンパー(宇宙の終焉)の静寂まで、宇宙全史を俯瞰的に眺めていく。第1章を過去編として、「宇宙誕生」から宇宙暦10分の「物質生成時代」、宇宙暦100万年の「暗黒時代」、宇宙暦10億年の「恒星誕生時代」、そして現在(宇宙暦138億年)の「天体系形成時代」を紹介する。そして、第2部を未来編として、宇宙暦数百億年の「銀河壮年時代」、宇宙暦1兆年の「赤色矮星残存時代」、宇宙暦100兆年の「第二次暗黒時代」、宇宙暦10の20乗(1垓)の「銀河崩壊時代」、宇宙暦10の40乗(1正)の「物質消滅時代」、宇宙暦10の100乗年の「ビッグウィンパー時代」を予測する。著者のいうように、想像を絶する宇宙の巨大さと、それを知ろうとする人間の気骨を感じるストーリーである。
(紹介:原智子)