Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2018年2月号掲載
星ナビ著者たちの書籍をじっくり読む

『星ナビ』には多くの執筆者が、さまざまな記事を担当して書いている。読者のなかには「お気に入りの連載を毎月楽しみにしている」という人も多いのではないだろうか。今回はそんな執筆者や記事制作の協力者が、2017年に出版した書籍を集めてみた。いずれも、それぞれの専門分野について深く掘り下げた内容でとても興味深い。

まずは、連載「星の都の物語」で世界各地の天文文化について歴史を交えて紹介している廣瀬匠氏の最新刊から。『天文の世界史』 は、太陽・月・惑星・恒星といった天体ごとに、西洋・インド・中国・中米など、さまざまな地域の歴史的視点で天文学に切り込んでいく通史。これまでも「天体(天文現象)は政治や宗教と深く関わってきた」ということを私たちは知っているが、具体的に西洋や東洋でどんな文化の基になったのか、わかりやすく教えてくれる。あるときは暦や時間として生活の基になり、あるときは芸術や文学などのモチーフとして精神に影響を与え、そしていつの時代も人間は、宇宙の歴史や謎に探究心をかき立てられる。著者の専門が「古代および中世のインドにおける数理天文学の文献学的研究」であることからもわかるとおり、基本的には文献をたどって客観的に天文学の歴史を語っているが、織り込まれた逸話から先達への敬意と愛情を感じる。

『地球外生命は存在する!』 は、国立天文台天文情報センター普及室長の縣秀彦氏が、2015年に刊行した『地球外生命体』に、加筆修正し2017年に発行したもの。2年の間に同キャンパス内にはアストロバイオロジーセンターが発足し、系外惑星も次々に発見された。そのなかにはハビタブルゾーン(生命居住可能領域)の星もあるという。あらためてこの本で、最新のアストロバイオロジー(宇宙生物学)を学ぼう。

わかりやすい語り口と図解で、「毎月の注目天文現象」を紹介している浅田英夫氏が著したのは『深読み!ギリシャ星座神話』 。これまでも多くのギリシア神話ガイドが世に送り出されたが、この本は副題に「独自の解釈でもっと楽しむ」とあるように、現代的な表現や解釈が随所にあり、新鮮で面白く読み進めることができる。それだけでなく、物語に付随するエピソードもしっかりフォローされているので、登場人物の関係や背景がわかり理解を深めることができる。

「ビジュアル天体図鑑」で美しい写真やイラストと興味深い解説を掲載している、沼澤茂美氏と脇屋奈々代氏のコンビが贈るのは『星座の図鑑』 。季節ごとの星座と南天の星空を案内するガイドブックだ。この図鑑には、各星座に点在する星雲・星団・二重星などの見どころ天体が写真付きで多く載っているから、肉眼で星座をたどるだけでなく望遠鏡で詳しく観察するときにおすすめの一冊。

天体撮影や画像処理の記事でお馴染みの中西昭雄氏が2014年に刊行した『メシエ天体ビジュアルガイド』が、新たに多くのNGC・IC天体を加えて収録した増補改訂版『メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド』 となって登場。天体を撮影したい人にとっては、経験豊かな天体写真家が教えてくれる最高の参考書である。

同じ写真集でも『悠久の宙』 は、KAGAYA氏独自のアーティスティックな美しさにあふれた作品。連載「KAGAYA通信」で撮影秘話をつづっていた写真もある。彼の努力とセンスで切り取られた自然は、多くのファンを魅了する。

最後に紹介する『眠れなくなるほど宇宙がおもしろくなる本』 は、前述の縣氏が監修した天文雑学本。子どもから大人まで「へー、そうなんだ」と興味をひく話題や疑問が285も詰まっている。覚えておくと、他人との会話のネタにも使えそう。

今回は間に合わなかったが、渡部潤一氏をはじめ本誌関係者の著書や監修本はまだあるので、これからも随時紹介していきたい。

(紹介:原智子)