春の訪れとともに、多くの人は「何か新しいことを始めよう」と思う。進入学や就職など新しい暮らしが始まった人はもちろん、そんな時期をずいぶん前に過ぎた人でも(笑)「4月からのスタート」は良いきっかけになる。星空を紹介する本でも「春の星座」から始まるものが多い。そんな気分にぴったりの本を紹介しよう。
『カリスマ解説員の楽しい星空入門』はタイトルどおり、ベテランのプラネタリウム解説員が楽しく親しみやすく星空を案内する入門書。プラネタリウムで解説するそのままの優しく語りかける文章で、“読む”というより“聞いている”気分になる。著者は「私はこの春の大曲線が一番好きです。というのは、空を見上げて大きく描くカーブを見つけると、心がのびのびとしてくるからです」と“話す”。そう“聞い”たら、誰もがきっと「わあ、自分も探したい!」と思う。こうして、四季の星座を「探したい気持ち」にさせてくれるところが解説員の力。もうひとつ読者が気になるのが、第6章「プラネタリウムの裏話」。思わぬ失敗談や感動的な出会いのほか、2001年に惜しまれながら閉館した五島プラネタリウム(東京都渋谷区)の様子は、当時を知る人にとって懐かしく、知らない人には興味深いだろう。あなたはこの本を読んで、星空の下とプラネタリウム、どちらに行きたくなる?
『星とくらす』は、岡山県倉敷市に実在する古本屋「蟲文庫」店主が、「星を見るのが好き」という気持ちを素直につづった随筆。既刊の『苔とあるく』『亀のひみつ』に続く「理科エッセイシリーズ」第3弾だ。文系星好きに向けて情緒あるエッセーや等身大のエピソードで構成されているから、天文の知識がなくても楽しく読み進められる。星との暮らしをより楽しむために理科知識をイラストで、わかりにくい仕組みは4コマ漫画で、それぞれ解説している。「理科は苦手だけど、星空には興味がある」という人にぴったりの一冊。
同じように、文系天文初心者に贈ると喜ばれそうなのが『星の辞典』。美しい写真やイラストに星座解説や天文用語の説明が添えられた、手のひらサイズのビジュアルブック。おしゃれで素敵な辞典だが、個人的にはもう少し紙がしなやかだと手になじんで、さらに良いバイブルになりそう。
次は、付属の専用レンズを使って見る「立体写真館シリーズ」の3冊。『星がとびだす星座写真』は過去に出版された同書の新装版、『ハッブル宇宙望遠鏡で見る驚異の宇宙』と『ハッブル宇宙望遠鏡でたどる果てしない宇宙の旅』は最新情報を反映させた新装改訂版だ。立体視で感じる宇宙の奥深さは、平面の写真にない臨場感で、その仕掛けだけで興味をかきたてられる。
そんな「興味」を「学び」に発展させるとき役立つのが『宇宙用語図鑑』と『知っておきたい単位の知識』。いずれも、天文や物理を理解するときに必要な基礎用語をわかりやすく教えてくれる。これから学ぶ人はもちろん、「この言葉の意味は何だったかな」とあらためて確認したい人にもおすすめ。とくに前書は、わかりやすいイラストで簡潔に説明しているので、中学生や初心者でも使いやすい。天文雑学本として読んでも面白い。
(紹介:原智子)