当コーナーでは、これまで何度か「系外惑星」をテーマに関連書籍を紹介してきた。系外惑星とは「太陽系以外の惑星」のことであり、2018年3月の時点で3700個以上見つかっている。最初の発見がたった25年ほど前だと思うと、この分野の激変ぶりにあらためて驚かされる。新しい系外惑星が見つかるたびに研究は深化し、最新情報や研究成果を紹介する本が次々に上梓されるのだ。
まずは『系外惑星と太陽系』で、基本を押さえよう。系外惑星探しの歴史と発見方法、「ホット・ジュピター」「スーパーアース」などの言葉の意味、多様な系外惑星の姿について書かれている。系外惑星の探査とは、“第二の地球探し”であり、それは“地球とは何か”に行き着く。だからこそ、タイトルに「太陽系」がつく。この本を読んでいると地球は特別な星ではなく、宇宙はバラエティに富んでいて、その中のひとつが地球なのだと感じる。
『系外惑星探査』は同じテーマを理工系大学生に向けて、専門家が解説した教科書。系外惑星探査の背景にある理論を体系立てて説明するために、前半で「系外惑星探査の現在」「基礎概念」「天文学的な特徴」「観測手法」という観測的基礎についてまとめ、後半で「惑星光の伝達」「大気構造の物理」「観測装置の原理」「データ解説」という理論的基礎についてまとめている。著者は「理論を知った上で見上げる夜空は少し違って見えるかもしれない」とつづっている。
さて、2017年8月号の当コーナーで、チャンドラ・ウィックラマシンゲ氏が書いた『彗星パンスペルミア』を紹介したことがある。「宇宙には生命が満ちていて、それが隕石などの方法で地球に運ばれた」とするパンスペルミア説を説いたものだった。『宇宙を旅する生命』は同じ著者が、師であり共同研究者であった故フレッド・ホイル氏と歩んだ道のりを紹介する自伝。天文学に限らずあらゆる学問には、多数派の占める主道路も個性的な独自路線もある。どちらも学術史において記録するべき大切な説であり、二人の研究も宇宙生物学の進展に欠かせないだろう。
同説を一般人向けにわかりやすく噛み砕き、とっつきやすいようキャッチーな内容で著したのが『YouもMeも宇宙人』。まず、文字が大きくて読みやすい! これは天文初心者にアプローチするのにかなり有利で、読まず嫌いせずにページをめくってもらえそう。そして現れる、チラシのような大小の文字とユニークなイラスト。巻末にはミニクイズもついて、「パンスペルミア説アリなんじゃない!?」と思わせる一冊。
『生命の起源はどこまでわかったか』は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)深海・地殻内生物圏研究分野分野長の編者が、広報誌『海と地球の情報誌 Blue Earth』150号記念として3号連続で掲載した記事を編集加筆した単行本。取材協力を得た研究者は同機構内にとどまらず、太陽系探査科学、アストロバイオロジー、生物地球化学、電気化学など多岐にわたる。同書のコンセプトは「生命の起源やアストロバイオロジー研究のショッピングモール」とのこと。ショーウィンドウを見ながらぶらぶら歩くように、各専門者の魅力的な話を学び楽しもう。
ここまで単純に「生命」と書いてきたが、『天文学者が、宇宙人を本気で探してます!』で探しているのは、「地球外“知的”生命」である。「SETI(セチ)」と呼ばれる知的生命探査プロジェクトで、こちらも近年急速に発展している。実際に「知的生命からのメッセージか!?」という騒動があり、来たる日に備えて「発見時の対応マニュアル」もあるという。そんなSETIの最新情報を、日本唯一の研究者であり天文家の著者がわかりやすく教えてくれる。
(紹介:原智子)