ここ数年、「異常気象」とか「○○年に一度の気候」という言葉を聞かない年はない気がする。気象庁では原則的に、ある地点・ある時季において30年に1回以下の現象を「異常」と定義しているが、社会的な影響が大きい現象も「異常気象」と呼ぶことがある。その場合は、「極端な現象」とも表現される。そんな極端な気候の一因に、“太陽”が関係しているといわれる。まずは、教科書で太陽の基本を学ぼう。
『シリーズ現代の天文学 太陽』の第2版が2018年12月に刊行された。初版の出た2009年は、日本の「ひので」衛星が世界一級のデータを取得し始めたころで、届いた鮮明な画像にとても驚いた記憶がある。その後、各国の観測衛星や最新大型望遠鏡の観測結果により、太陽研究はさらに進展した。第2版では、太陽の構造や現象など基礎的な解説から、地上の人間や社会インフラに悪影響を及ぼす宇宙天気現象まで、この10年間で得られた最新情報を盛り込み掲載している。
前書は大学生を対象にした専門書だが、一般の人にも読みやすくした新書が『太陽は地球と人類にどう影響を与えているか』だ。太陽面の爆発について、フレアについて、そして地球気候への影響について、豊富な観測データを用いて解説している。「太陽は一見するといつも同じように輝いているが、実は変動している」ということを、人類はどのようにして知ったのか。そして、その変動が地球や人類にどのような影響を与えているのか。国立天文台で太陽観測の統括を担う研究者による、太陽物理学の入門書。
さらに、小中学生にも理解できるようにわかりやすく書いたのが『太陽ってどんな星?』。著者は太陽物理学・宇宙線物理学・宇宙気候学の専門家で、太陽活動や宇宙線の長期変動を明らかにする研究をしている。南極の氷や屋久杉に刻まれた記録から昔の太陽活動を調べるなど研究の姿を見せながら、黒点やフレアなどの太陽活動を解説する。地球の長い歴史の中で、太陽が人間の生活(気候変動)にも大きく関わっていることを親しみやすく伝えている。
次の2冊は、外国人研究者が長期的な気候変動について書いた本を翻訳したもの。『太陽活動と気候変動』はフランス国立科学研究センター主任の太陽物理学者と、同センター研究技士で航空局の地球物理学者(気象学者)が、2000年に刊行した『HISTOIRE SOLAIRE ET CLIMATIQUE』が原書。訳者は、「十数年経過しているものの、この分野の簡便なハンドブックとして大いに利用価値がある」として、今年刊行した。天体の光学的観測が初めて行われた17世紀ヨーロッパにさかのぼり、太陽活動と気候変動の密接な関係について、様々な観測事実に基づいて解説している。あわせて、現在の地球温暖化についても、多面的に検討する。その過程の中で17世紀の天文学史、とりわけフランスの天文学史について紹介しているのも興味深い。
最後の一冊は「太陽」というキーワードから離れてしまうが、「地球規模の変動」ということであわせて紹介しておく。『繰り返す天変地異』は2017年に出版された『CATACLYSMS』が原著。著者は生物学教授で、専門は地球史・進化・大量絶滅・火山学。NASAのコンサルタントも務める彼が、地球の地質学的進化を宇宙・天体研究から論じる。世界各地のクレーターや地質記録を訪れて、自身の提唱するシヴァ仮説を紹介する。それによると、地球の地質学と生命史を理解するのには、太陽系や銀河における地球の位置づけが必要だと説く。さらに、ダークマターによる影響の可能性についても触れる。
今回紹介したどの本も、太陽が地球に及ぼす影響の研究は今後ますます必要とされる分野である、と強調している。
(紹介:原智子)