先号では高度な宇宙物理をあつかう教科書を中心に紹介したが、「難しくて手が出なかった」という人にはもう少し読みやすい書籍をお薦めしよう。
『アンドロメダ銀河のうずまき』は、タイトル通りアンドロメダ銀河をテーマにした読み物だが、その深意は「銀河の正体を探ることで宇宙の進化を知る」ことである。アンドロメダ銀河は渦巻銀河に分類されるが、作者はまず「本当に渦が巻いているのか?たくさんの環があるのか?」と問いかける。そういえば、私は太陽系が含まれるこの銀河のことをある時期まで「銀河系」と呼び「渦巻銀河」だと習った。現在は「天の川銀河」と呼び、「棒渦巻銀河」に分類されている。見慣れているアンドロメダ銀河についても、あらためて学び直すととても興味深い。長い宇宙の歴史の中で、銀河がどのように誕生し、成長・変化し、消滅していくのか、壮大な謎解きをするように読むことができる。
『宇宙は無限か有限か』という問いも、答えのない大いなるミステリーだ。古代の人間が「海の果てはどうなっているのか」と考えたとき、「球体という“無限な有限”」である事実をどう感じただろうか。私たちも「宇宙」をどのように想像したらいいのか。ユークリッド幾何学から非ユークリッド幾何学の世界に広がり、空間曲率やバリオン音響振動を学び、無限大の宇宙について考える。この本では、多くの科学者たちが少しずつ解きほぐしてきた過程を紹介しながら、宇宙構造の神秘と解答のない問題の深さを紹介する。
『138億年宇宙の旅』は、2017年に発行されフランスのベストサイエンスブック・オブ・ザ・イヤーを受賞した単行本の文庫化。ホーキングの直弟子である人気サイエンスライターが、E=mc2という一つの公式を読者に与えて宇宙の旅に連れ出す。「あなた」はビッグバンやブラックホールの現場に置かれ、観光ガイドの名解説に導かれるように多宇宙や超ひも理論など宇宙のさまざまな“シーンを目撃”する。下巻巻末で解説する村山斉氏によると「この本では少々正確さに欠ける記述もありますが、本書の醍醐味はこうした『豆知識』ではなく、ざっくりといままでにわかってきた、そしてまだわからない宇宙の姿を『見せて』くれること」だという。天文学の最先端にいる科学者も太鼓判を押す面白さだ。
ここからは、さらに初心者(あるいは児童)向きの本を紹介する。『図解 宇宙の話』は、専門知識のない人でも読みたくなるような話題にしぼって、豊富なイラストを用いながらわかりやすく解説する入門書。「地球の誕生と未来」という身近なテーマから、月や太陽へと範囲を広げ、太陽系や銀河の疑問に答え、最終的には最新宇宙論まで紹介する。子どもから「木星にある縞模様はなに?」「ビッグバンはどうして起こったの?」と質問されて答えに迷ったら、親子で一緒に読もう。同シリーズに『図解 相対性理論』がある。
『宇宙の終わりってどうなるの?』は、全編ふりがな付きの「子供の科学★ミライサイエンス」シリーズの宇宙論編だ。地球や月についての疑問から、宇宙の終わりってどうなるの?という大きな疑問に向かって、「知りたがりのチュータ」と「物知りのミライネコ」が案内していく。前書と同じく図解が豊富でわかりやすく、さらにカラーで鮮やかなので子供一人でも楽しく読める。同シリーズに『宇宙探査ってどこまで進んでいる?』『タイムマシンって実現できる?』がある。
『最新 宇宙論』は、宇宙の姿や疑問をカラーのグラフィック図解で解説したムック本。前述の2冊より大判だから、写真や図解が美しくて次々にページをめくりたくなる。内容は、「宇宙のはじまり」「現在の宇宙の姿」「まだ解けぬ宇宙の謎」「宇宙開発最前線」という4つのチャプターで構成されている。
(紹介:原智子)