人類はこれまでも長い歴史のなかで、様々な感染症と闘ってきた。ウイルスは宿主の細胞に侵入しないと増殖できないから、いわゆる生物とは言いにくい。今回は「生命は宇宙でどのように誕生したのか」そんなことを考えながら本を選んだ。
『交響曲第6番「炭素物語」』はカーネギー研究所の地球物理学研究所で深部炭素観測の責任者を務める著者が、炭素科学の様々な事実と未知について、交響曲のように“4つの楽章”で紹介するユニークな解説書。炭素原子はビッグバンの数十分後に誕生し、その一部は今も私たちの体内にあるという。アリストテレスの唱えた4元素「土・空気・火・水」をキーワードにしながら、トランペット奏者でもある著者が各楽章で「深部の炭素」「旅する炭素」「暮らしの炭素」「生命の炭素」について奏でるように語る。関連情報を示す二次元バーコードが、本文の各所にあるのも新しい試み。
『なぞとき宇宙と元素の歴史』はマックス・プランク重力物理学研究所シニア研究員の著者が、上智大学で担当した一般教養科目「宇宙の科学」をベースに最新の研究成果を加筆したもの。文系学生向けの内容で、登場する数式は「アインシュタインの式」一つだけだから、高度な専門知識がなくても読める。宇宙誕生直後に作られた水素やヘリウム、そして生命にも欠かせない炭素など、元素に注目しながら宇宙の歴史をたどる。
このあとの3冊は、系外惑星分野の書籍である。『ハビタブルな宇宙』は、生命居住可能領域について“多角的”に迫る専門書。多角的とは文字通り「天空(宇宙)」の視点と「私たち(地球)」の視点、そしてこの2つが交錯するところにある「ハビタブル」の領域を、それぞれ関連させながら解きほぐしていくということだ。サイエンスとして興味深いだけでなく、読み手に新しい宇宙観や生命観をもたらす。
ブルーバックスシリーズの『地球は特別な惑星か?』は、系外惑星と地球外生命の探査について、理論と観測の両面から解説する入門書。科学新書らしい、端的でわかりやすい内容が期待を裏切らない。各章の冒頭で、これから解説する内容の概要を数行で表しているので、天文学の授業を受講するように理解を進めることができる。
『第二の地球が見つかる日』も系外惑星をテーマにした新書だが、こちらは科学的解説のあいだに小説が挿入される斬新なスタイル。読者は、登場人物の青年研究員の目線で、系外惑星の観測に取り組んでいるような気持ちで読んでいく。ノンフィクションの部分では、太陽系について・太陽系内にある「第二の地球」の可能性・太陽系外惑星について・最新の研究現場などを丁寧に解説してくれる。著者は福島県出身であり、小説にも東日本大震災による原発事故が主人公の人生に大きな影響を及ぼすシーンが登場する。と同時に、星を見ることが“生きる”という静かな気づきを彼にもたらす。もしかしたらそれが“人類が星を見る理由”なのかもしれない。人類はまだパンデミックすら制御しきれない段階だが、第二の地球に生命体が見つかったとき、私たちはどんなコンタクトをとれるだろうか。
(紹介:原智子)