『星ナビ』創刊20年、おめでとうございます。聞けば、前身の『スカイウオッチャー』より長くなったとのこと。何事も“継続”には様々な努力や協力が必要であり、この結果は素晴らしいことだと思います。そんな“継続”が実を結んだ日本の宇宙開発の一つが、本誌でも紹介されている「はやぶさ2」の帰還ではないでしょうか。まもなく、小惑星リュウグウから玉手箱(試料入りカプセル)が届くのを、日本中の人々が楽しみにしています。
というわけで今回は、「はやぶさ2」の帰還と新たなる旅立ちを祝して、日本の宇宙開発に関係する本を集めました。『宇宙のがっこう』は、宇宙の謎と宇宙開発について紹介する児童向けのJAXAオフィシャルブック。修学旅行で宇宙に行くことになった主人公とともに“宇宙のがっこう”の特別講習を受けながら学んでいきます。「宇宙にはどうやって行くのか」「何を持って行くのか」、親しみやすいイラストや写真を交えて教えてくれます。
ここからは宇宙飛行士の本を続けて紹介します。『星宙(ほしぞら)の飛行士』は2015年に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した油井亀美也さんが、宇宙と自分について語った初の単行本。当時、彼が発信し続けたツイッターは18万人以上のフォロワーを数え話題になりました。彼が届けてくれた宇宙や地球の姿、そして様々なメッセージは、地上にいる私たちに感動を与え、宇宙をより身近な存在にしてくれました。また、訓練中のエピソードとしてロシア人やアメリカ人に対する感情が変わった話は、自衛隊で戦闘機パイロットだった彼ならではだと感じ、その偏見と変化の両方が私には興味深いです。
『宇宙に行くことは地球を知ること』は、宇宙飛行士の野口聡一さんとミュージシャンの矢野顕子さんの対談集。野口さんは間もなくスペースXの新型宇宙船「クルードラゴン」に搭乗し、ISSでの任務に就きます。そのことに関連して、宇宙ビジネスについて語っている点もイマドキらしいです。また、対談が進む中で新型コロナが流行し、社会を取り巻く状況が変化したことも2人の会話に深みを加え、“宇宙について語り合うことが地球の未来について考えること”であると気づかせてくれます。
『宇宙飛行士、「ホーキング博士の宇宙」を旅する』に登場するのは、若田光一さんとホーキング博士の48の言葉。その発端は、2014年のISS滞在時にイギリスのテレビ番組の企画でホーキング博士と対話したこと。直接言葉を交わしたときに博士の温かい人柄と縁を感じた若田さんが、対話の続きをしたいと願い生まれた書籍です。宇宙を深く探究した科学者の言葉を、宇宙に4度行った飛行士の目線で語っています。
『宇宙からの帰還 新版』は宇宙飛行士12人の内面の変化を立花隆氏が取材し、1981〜82年に雑誌連載、1983年に単行本、1985年に文庫化したもの。2017年に著者と野口聡一さんの対談を収録し、2020年に毛利衛さんのエッセイを加えた新版です。当時の状況をあらためて知ると、積み重ねられてきた歴史を強く感じます。
『宇宙兄弟リアル』は宇宙飛行士だけでなく、それを支えるスタッフなど現場のリアルな姿を伝えるドキュメント。漫画のキャラクターと対比させながら紹介しているのでわかりやすいです。いつか宇宙開発に関わりたいと夢見る子どもたちはきっと参考になるでしょう。そして、巨大プロジェクトを成し遂げるまでの物語は、大人にも感銘を与えてくれます。
おりしも、JAXAから13年ぶりの宇宙飛行士募集が発表されました。今後、宇宙飛行士たちがどんな宇宙開発を行うか注目したいです。ロケット開発や天体探査の関連本は、また改めて紹介します。
(紹介:原智子)