今年は、アインシュタインのノーベル物理学賞受賞から100年である(保留だった1921年度受賞が、1922年度受賞者と同時に発表された)。彼がこの知らせを受けたのは日本へ向かう船上で、間もなく到着し滞在した11月17日から12月29日までの43日間、各地で大きな歓迎を受けた。大正時代の日本人にとって、世界一の物理学者はどんなふうに映っただろうか。
ちなみに、ノーベル賞受賞理由は「光電効果の法則の発見」であり、相対性理論ではなかった。当時の研究者たちから正当な評価をされにくかったこの理論について、現代の私たちに易しく教えてくれるのが『ニュートン式超図解 最強に面白い!! 相対性理論』だ。シリーズ第22弾の同書は、シンプルでわかりやすい言葉と親しみやすいイラストが特徴。大きめな文字で要点にマーカーを引き簡潔に説明していくから、相対性理論を知りたい子供やもう一度学び直したい大人にぴったり。各章に挿入された関連コラムや、アインシュタインの人生を紹介する4コマ漫画も面白い。
もっと本格的に理解を深めたい人には『続・相対論の正しい間違え方』をお勧めする。科学雑誌『パリティ』に2017年4月から2018年1月まで連載された講座記事に式や図表を加え、雑誌では文字数の都合で割愛された内容を加筆修正したもの。著者曰く、当時より三割増しの豪華本。「続」と付くように、2001年発行の『相対論の正しい間違え方』の続編だが、内容的には応用編とのこと。相対性理論初心者が陥りやすい疑問や誤りを“正しい間違い”として、具体例を示しながら真の理解へ導いてくれる。
「かがくのえほんシリーズ」の『重力波発見の物語』は、一般相対性理論に基づいて予言された重力波について、柔らかな色調のカラー挿絵を用いながら、語りかけるような言葉で解説する大人の読み物。「アインシュタイン最後の宿題」といわれた重力波を捉えるために、長年にわたり多くの研究者が様々な挑戦と工夫を重ねた。やがて、提唱されてから約100年後の2015年に重力波の観測に成功し、2017年に関係者がノーベル賞を受賞した。そんな研究者たちの歩みと今後の観測計画を、大学院で物理学を専攻したイラストレーターが、紙面いっぱいに美しく表現している。
こうして捉えられた初の重力波は、ブラックホール連星から届いたものだった。つまり、「宿題」を解く鍵は連星だったのである。そんな連星の基礎知識から、連星によって解かれる宇宙の謎まで、“連星の魅力”がギュッと詰まっているのが『連星からみた宇宙』だ。著者の師であり、連星研究の第一人者である中村泰久氏は「連星でなければ、星ではない」と言ったそうだ。その真意は「連星を知ることは、宇宙を知ること」で、連星が星のプロフィールを明かして、超新星やブラックホールなどの解明に寄与するというのだ。著者の熱い“連星愛”が伝わる一冊。
アインシュタインは、自身の重力場方程式に「宇宙定数」という係数を導入した。いま私たちが「ダークエネルギー」と呼ぶ理論につながるもので、現代宇宙論において重要なキーワードの一つである。私たちが生きるこの宇宙が整うためには、様々な定数が特定の値を持つことが必要で、物理学者は「宇宙の微調整問題」と呼んでいる。『なぜか宇宙はちょうどいい』では、具体的にどんな定数があって、その数値を変えるとどんな変化が生じるのか教えてくれる。重力定数・プランク定数・フェルミ定数・ハッブル定数・宇宙の曲率・バリオン光子比・エディントン数など、登場する言葉を唱えているとだんだん呪文のように思えてくる。まさに、そのすべての呪文が整って魔法のようにこの宇宙が完成しているのではとさえ感じる。
(紹介:原智子)