Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2021年5月号掲載
「はやぶさ2」のカプセル公開と宇宙探査の未来

小惑星探査機「はやぶさ2」がリュウグウの玉手箱を地上に届けてから4か月。肝心の試料はカプセルにたっぷり入っていて、今後の解析に大きな期待が寄せられている。C型小惑星リュウグウの試料から「生命誕生の謎」に迫る日が楽しみだが、まずは「再突入カプセル」が一般公開された。3月12日〜16日にJAXA相模原キャンパスのある神奈川県相模原市の市立博物館で展示され、3月27日〜4月11日には国立科学博物館で展示企画展が開催された。筆者は(星ナビ発売当時)まだ見ていないが、カプセルを熱から守ったヒートシールドや、ウーメラ砂漠に着陸したパラシュートなど、きっと「はやぶさ2」の長旅を感じることができるだろう。

そんな「はやぶさ2」のプロジェクトについて、そばで見守り続けた的川泰宣氏が克明に綴ったのが『「はやぶさ2」が舞い降りた日々』だ。チームは様々な難題を乗り越え、プレッシャーのなかで必要なタイミングに判断を下し、そして成功の喜びを分かち合う。宇宙探査の物語であると同時に、人間の物語であるとあらためて感じる。

そして、物語の主役であるプロジェクトメンバー45人が、それぞれの担当部門について解説したのが『「はやぶさ2」のすべて』。時系列に沿って、探査の目的や意義・各部メカニカル・ロケット打ち上げ・小惑星リュウグウ探査・人工クレーター生成・地球への帰還と拡張ミッション等について、工学と理学の側面から紹介する。大判の紙面に豊富な写真と図版を使いながら、現場の専門家が教えてくれるグラフィカルな解説書。

『はやぶさ2の全軌跡』は、もう少し手軽に「はやぶさ2」の活躍と、初号機「はやぶさ」について学べるムック。今回のサンプルリターンで研究の進展が期待されるアストロバイオロジーについても触れている。

後半は、本誌特集で扱った「火星探査」にちなみ、宇宙探査に関係する書籍を紹介しよう。まずは、『宇宙探査の歴史』。ロケット製造の始まりから、アメリカとソ連の宇宙開発競争、歴代アポロの記録、国際宇宙ステーションなどの国際協力と各国の現状、火星探査への挑戦、次世代の宇宙アクセスなど、人類が宇宙に挑み続けてきた歴史が、大きな紙面と膨大なページにぎっしり詰まった「ビジュアル大図鑑」。スミソニアン博物館やNASAなどに所蔵されている貴重な資料をもとにその歩みを丁寧にたどることで、人類の努力と情熱が伝わってくる宇宙探査図鑑の決定版。

『探査機・観測機器61』は、宇宙や地上で現在活躍中の探査機や観測機器61機を紹介することで、現代宇宙物理の最前線を展望する書籍。太陽や月・惑星など太陽系内を探査する観測機器から、宇宙の謎に迫る巨大天文台や観測衛星まで掲載。これらの探査機や観測機器が何を調べているか理解することで、そこから導かれる天文学の将来がわかる。

最後に紹介する『宇宙岩石入門』は、宇宙から地球に届いた石(つまり隕石)や宇宙から人為的に入手した岩石試料(つまりサンプルリターン)について、宇宙物質科学の観点から学ぶ教科書。これまで当コーナーを長く担当してきたが、“宇宙岩石”の専門書を取り上げるのは初めてだ。著者は「はやぶさ」初号機のサンプル分析にも参加している。この本では「鉱物学の基礎」と「地球化学の基礎」をベースに、隕石と小惑星の種類や分類方法を紹介。そして、これまで行われた各種サンプルリターン(月・彗星・太陽風・小惑星)と今後の計画(火星など)について解説する。「はやぶさ2」の試料がどんな意味を持つか、あらためて知ることができる一冊。

(紹介:原智子)