100年前の1922年、アインシュタインが日本を訪れ各地を周遊しながら講演を行った。おりしも、彼を乗せた船が日本に到着する1週間前の11月9日に(保留になっていた)1921年度ノーベル物理学賞授与が発表され、出迎えた日本人は時の人であるアインシュタインを大歓迎したという。
彼の物理学者としての足跡と思考、重力波などの研究成果と未解決問題を紹介するのが、ズバリ『アインシュタイン』。月刊誌『日経サイエンス』50周年企画の一環として、過去の記事から22編を選びまとめたものだ。そして見逃せないのが新たに加わった2編、本人が執筆した「一般化された重力理論について」と、亡くなる2週間前のインタビュー「アインシュタインの最後の言葉」である。いずれも『サイエンティフィック・アメリカン』から初翻訳された記事で、前編は1948年に発表した論文を同編集部の依頼により一般読者向けに書き下ろし1950年4月号に掲載したもの。後編は、科学史家I.B.コーエンが彼の自宅で対話した貴重な記録。アインシュタインの概括を一通り押さえることができる一冊になっている。
そんなアインシュタインが導いた「重力場方程式」を理解しようと、自称文系ライターの著者が取り組む姿をつづったのが『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた』だ。よくある“数式なしでもわかる科学本”の有意義さを著者も認めつつ、あえて「数式の世界最高峰」に挑戦する経過を登山にたとえながら解説していく。あなたもこの機会に、登山仲間に導かれながらアインシュタイン方程式への登頂を目指してはいかが。
もっと本格的に理解し宇宙論の入り口に立つには、『宇宙を統べる方程式』を読むといいだろう。数式の登場しない「一般向け書籍」と大学院で宇宙論を学ぶ「教科書」の間に位置する実践的「参考書」。高校物理を学習し終えた読者をターゲットに、一般相対性理論・アインシュタインの宇宙モデル・フリードマンの宇宙模型・膨張宇宙の検証・初期宇宙の熱力学・インフレーション理論について解説する。著者は「本書が、宇宙論を習得する階梯の2段目として役立つことを願う」と書いている。
ここまで学んできた人がいよいよ最終段階として、大学院レベルで初期宇宙を研究する教科書が『宇宙論I[第2版補訂版]』。「現代の天文学シリーズ」から2007年に刊行された同書が、2012年の第2版で「インフレーション宇宙論」について大幅な改訂を行い、さらに2021年に全章にわたって最近の進展を反映したのが、この第2版補訂版。本書で学ぶ若き研究者が、次の版に反映されるような新しい成果を導き出すことを期待したい。
さて、ここまでアインシュタインを中心に宇宙物理を学ぶガイドブックを紹介してきたが、物理学の道は古代から続く先人のバトンリレーによって築かれてきた。その道のりを教えてくれるのが『絵でわかる物理学の歴史』だ。親しみやすいイラストを用いた「絵でわかるシリーズ」だから、中学生でも読みやすい。ちなみに物理(もつり)も自然(じねん)も仏教用語で、己を理解しようとすることも宇宙を理解しようとすることも根源は同じかもしれない。
さらに小さな読者には、アインシュタインと並ぶほど有名な科学者の伝記絵本をお勧めしよう。それは『スティーブン・ホーキング』である。車いすに乗った博士の人生は、科学者になりたい子供にも、まだ何になりたいかわからない子供にも、きっと大きな勇気と好奇心をくれる。
(紹介:原智子)