Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星ナビ2023年5月号掲載
星空マップを広げて 星座を探そう

今年の春の訪れは早足で、早々に「東京の桜の開花」が宣言された。といっても、2020年と2021年に並ぶ早さだと言うから、もはや温暖化はすっかり定着し「智子は東京に冬が無いといふ」気持ちだ。しかし、夜空の季節は気候変動と関係なく昔と変わらず、当コーナー担当が生まれ育った信州で見たときと同じ星座が輝いている。

そんな星空についてわかりやすく案内してくれるのが『星空の教科書』だ。本誌連載の「三鷹の森」でお馴染みの渡部潤一氏が妻でサイエンスライターの好恵氏と著した入門書で、子供や天文初心者の質問に答えるような優しい語り口調で書かれている。同じく連載「KAGAYA通信」で見るKAGAYA氏の美しい写真もたっぷり載っているから、「これから星空を楽しみたい」という人への贈り物にしても喜ばれそう。

そして、「星空の楽しみ方はたくさんある」ことを教えてくれるのが『星座を探しに行こう』だ。著者は恒星分光学を専門に研究しながら、学生たちを指導する過程で幅広い天文知識を習得し、さらに天文学史についても造詣を深めた。出身地である九州を中心に多くの科学館で天文教育の支援を行っており、そのためだろうか、この本の星座解説はプラネタリウムでお話をしているように穏やかで、日々の暮らしに密着している。そんな天文の話題の一つに「九州島北岸で見られる『北斗の水くみ』」があり、書籍のページをすばやくめくる(いわゆるパラパラ漫画)ことで視覚的に楽しませてくれる。ちなみに、著者が最後に書いている「『星影』は本当にあるのだろうか」について、家人はオーストラリアで「天の川の影」を見ている。

『星空の図鑑』は、図鑑づくりに定評があるイギリスDK社の『THE NIGHT SKY MONTH BY MONTH』を翻訳したもの。2014年の初版では「2014年〜2022年の情報」を扱っていたが、今回「2023年〜2031年の天文暦」を掲載した新版が出た。大きな紙面に美しいデザインの星図が描かれていて、大判絵本をめくるときのようにワクワクする。この先8年間の天文暦をながめていると「このなかの天文現象をいくつ見ることができるだろうか!?」と考え、思わず今から晴天を願ってしまう。

一方『季節をめぐる 星座のものがたり』シリーズは、幼い子供の手でも扱いやすい小ぶりな物語絵本のような装丁。挿絵がかわいらしくて、文字背景のイラスト模様も物語世界を演出している。小学校中学年から中学生を対象にした総ルビで、ギリシア神話など星座にまつわる世界の物語を紹介する読み物。昨年9月に「春 おおぐま座 のろいでくまの姿になった美女ほか」が発売されてから「夏 へびつかい座 死者を生き返らせた名医ほか」「秋 みずがめ座 神々にお酒をつぐ美しい少年ほか」と順次刊行され、今年3月に「冬 オリオン座 女神アルテミスと恋に落ちた英雄ほか」が完成して四季がそろった。星座にまつわる物語をたくさん読んだ子供たちは、きっと実際の夜空で星を探したくなるはずだ。

最後に、『石垣島で星を観る』のはいかが。コロナ禍が終息しつつある今年「久しぶりに遠方へ天体観測に出かけたい」という人も多いのでは。「国内なら南天の空が見えるところへ」という天文ファンにぴったりなのがこの本だ。石垣島で暮らす著者が撮影した天体写真がふんだんに盛り込まれ、それぞれに石垣島での位置データも添えられている。これからの季節に見たいのは、やっぱり「みなみじゅうじ座」だろう。当地では「市の星」に制定されているそうだ。この本は石垣島の特産品販売サイト「島のもの屋」で購入できる。

(紹介:原智子)