メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第2回 会ったことのない師匠

星ナビ2005年2月号に掲載)

前回、幼少からメガスター完成に至るまでを書いたので、今日はその続きのつもりだったが、とても貴重なできごとがあったので、今回はこの話をしたい。

故・高城武夫氏の私設プラネタリウム「和歌山天文館」は、近くに和歌山市子供科学館ができて閉館するまでの間、人々に星空を見せ続けてきた。今回、投影機をドームから撤去することになり、その前に最後にもう一度、在りし日の星空を投影しようと、さる2004年12月11日にこの上映会が企画されたのだ。僕はこのニュースを聞き、ぜひ見てみたくなってこの上映会に参加してきた。

民家の片隅に立つ古びたドーム。直径は8メートルほど。内装はずいぶんと老朽化し、閉館後23年という年月を感じさせる。しかし集まった人々の熱気が、その古びた空気を新鮮なものに変えた。そしてドームに飾られていた高城氏の在りし日の写真。人々に星空を説く姿の、なんと暖かみのあることだろう。そして星空が現れた。ピンホール式だが星空は思いのほかクリアで明るい。そしてほのなか温もりを感じる。


僕は高城氏とはお会いしたこともなく、その名前を知ったのさえ、1年ちょっと前のことだ。けれども僕はこの人の影響を強く受けているのだ。

僕が初めて作った投影式プラネタリウムこそ、高城氏の著作「たのしい天体観測用具」(発行/誠文堂新光社)の中にあるミニプラネタリウムだったのだ。小学生の頃、これをはやる気持ちで組み立てたことを思い出す。投影してみたら、星空の見え方は期待したほどではなかったけれど、このミニプラネタリウムこそが、僕にピンホール式プラネタリウムの原理を教えてくれたのだ。この出会いがなかったら、その後の僕のプラネタリウムづくり、ひいてはメガスターの誕生もなかったかもしれない。

僕はこれまでいろいろな人物の影響を受けてきた。でも、プラネタリウムづくりの最初のきっかけでありながら、会ったことも、名前すらも最近まで知らなかった人物がいたのだ。そして、その人は僕が生まれる前から手作りのプラネタリウムの楽しさ、魅力を伝えていた。

もうこの世にいない、僕に強い影響を与えた高城氏。その原点に僕は来た。ここにはまだ高城氏の魂が宿っているようで、何か大いなるものに包まれている感覚がした。でもその魂が、少しだけ、物悲しげにも感じたのだった。

金子式プラネタリウム

和歌山天文館での最後の上映会で、初めて対面した金子式プラネタリウム。