メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第28回 マックノート大彗星を大追跡 前編

星ナビ2007年5月号に掲載)

年明け早々話題騒然となったマックノート彗星。最高の天文ショーをこの目で見届けるのはプラネタリウムクリエイターとしての使命! というわけで、行ってきました。

ブラック星博士からのタレコミ

明石市立天文科学館の井上氏と出会ったのは数年前。プラネタリウムの会合でだったと思う。何回かお話したことがある間柄ではあったが、僕の記憶に残ったのは、そう、同館で活動する、知る人ぞ知る正義の味方(?)軌道星隊シゴセンジャーの敵役、その名もブラック星博士として、であった(シゴセンジャーについてはまたの機会に改めて紹介したい)。

そんな井上氏からメールが届いたのは、1月20日の科学技術館での講演前であった。彼から諸々用件に加え「ところでマックノート彗星が凄いことになってますね」の一文があった。マックノート彗星か。ああ、コロナグラフ視野で明るくなったんだっけかな、とは記憶にあった。彗星が太陽に極端に接近すればそれなりに明るくなるのは当たり前。良くあることだ、と、完全に僕はノーマークでいたのだ。

しかし、とりあえずと思って、リンク先をクリックした僕は全身が一気に固まった。そこに表示されたのは、輝くコマと、湾曲しながらすさまじい模様を描きながら流れる尾。そう、それはまさに想像を絶する大彗星の姿だったからだ。プラネタリウムクリエイターたるもの、宇宙のすばらしさを世の中に伝える聖職にある僕が、これを見ないでどうする?そう思うのは当然である。

とめてくれるな!? 快晴のパースへ

だからその次の瞬間、僕がしたことは、当然、航空会社のサイトで飛行機の時間を調べることであった。井上氏曰く、この時期、晴天率が最も高いのはパースとのこと。天気予報サイトで調べると、なるほど、一週間を通じてオール晴れである。そして翌日、国際運転免許も取って(天体観測では、現地でのクルマ移動が必須だから)、奇跡的に翌日の飛行機に空席があったので、高額な正規料金にもめげず、なりふり構わず予約したのであった。本連載の担当編集者でもある星ナビ編集部の藤田嬢に、一応伝えておこうと、オーストラリアに行く旨メールすると「今からですか? 出遅れてるのでは」とまるでピントはずれの返事。オイオイそれでも天文雑誌編集者かっ(笑)と苦笑しつつ、カメラ機材をパッキング。翌日の福岡出張の後、羽田に戻ってそのまま成田に直行。ラジオ出演や打ち合わせなども強引に変更し(本当に皆さんすみません)という怒濤のような渡豪劇であった。

そして、ブリズベンを経由し、快晴のパース空港へと降り立ったのは、思い立ってからわずか2日後のことであった。冬の日本とは正反対の真夏のパース。輝く太陽。光り輝く街が僕を出迎えた。しかし僕はそんなものに興味はなかった。夕方、空に現れるであろう素晴らしいもの。マックノート彗星。その対面を前に心躍らせていた。

パース市

ほんとに来てしまったパース市。冬本番の日本と逆で夏真っ盛り!

インド洋に沈む太陽

こんな夕日まで見えた。インド洋に沈む太陽は幻想的。写真はプラネタリウム上映でも使えそうだ。