ほ座新星1999の発見 (Nova Vel 1999)
【1999年5月23日 VSOLJニュース(017)】
近接連星系中の白色矮星に降り積もったガスが爆発的に核融合反応を起こし、星の表面を吹き飛ばす現象を「新星」または爆発現象を指して「新星爆発」と呼びます(なお、新星は新しい星の誕生ではなく、近接連星の進化の後期に起きる現象です)。 新星は我々の銀河系で年に数個発見されていますが、肉眼で見えるほどに明るくなる新星は大変珍しく、確実な観測結果が記録されている1670年以降の新星のうち3等星よりも明るくなったものは9個しかありません。 ちなみに過去最も明るくなった新星はわし座新星1918(V603 Aql)で、-1.1等に達しています。 今世紀初頭のペルセウス座新星1901(GK Per)は史上2位の0.2等に達しています。 近年で最も明るかった新星ははくちょう座新星1975(V1500 Cyg)の1.8等です。
1999年 5月22日日本時間の夕刻、vsnet-alert 3008に発見時点で3等の新星の確認報告が報告されました。 まだ増光途中と思われますが、すでに史上10位の明るさで、この光度の新星は24年ぶりになります。 発見者は変光星観測者として有名なオーストラリアのPeter Williamsで(世界時22.396日)、その電話通報を受けてAndrew Pearceが確認を行ったものです。 日本時間 5月23日早朝発行のIAUC 7176によれば、Alan Gilmoreも独立に発見しています。 新星は日本の大部分からは観測の困難な南天のほ座に位置し、以下の位置が報告されています(いずれもJ2000.0分点)。
10h 44m 49s.5 -52゚ 25' 35" Anglo-Australian Observatory 10h 44m 48s.1 -52゚ 25' 32" P. M. Kilmartin
ほ座新星1999の発見位置
新星があまりに明るいために精密な位置の測定が困難で、位置にはまだ多少の誤差があり、爆発前の星の同定は確実にはなされていません。 USNOカタログ記載の以下の2つの星が爆発前の星の候補として挙げられています(Morel, Schmeer、いずれも vsnet-alert の情報より)。
10h 44m 49s.10 -52゚ 25' 29".9 赤光度16.6等、青光度17.8等 (Morel) 10h 44m 48s.42 -52゚ 25' 31".2 赤光度16.4等、青光度16.4等 (Schmeer)
いずれの天体の爆発であっても、13等以上の爆発を示したことになります。
VSNET, IAUCに報告された初期観測は以下の通りです。新星は増光し、2等台に入っています。
YYMMDD(UT) mag observer 990520.500 <5.1 (F. Farrell) 990522.396 3.1 (P. Williams) 990522.423 3.0 (A. Pearce) 990522.435 3.0 (A. Pearce) 990522.446 3.0 (A. Pearce) 990522.460 3.0 (A. Pearce) 990522.469 3.0 (A. Pearce) 990522.488 2.60I (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.488 2.72R (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.488 2.85U (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.488 2.88V (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.488 3.12B (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.490 3.0 (A. Pearce) 990522.500 3.0 (J. Tilbrook) 990522.518 3.0 (J. Tilbrook) 990522.519 3.0 (A. Pearce) 990522.535 2.9 (A. Pearce) 990522.562 2.9 (A. Pearce) 990522.574 2.58I (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.574 2.66R (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.574 2.85V (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.574 2.86U (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.574 3.13B (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.582 2.9 (A. Pearce) 990522.599 2.51I (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.599 2.61R (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.599 2.84V (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.599 2.88U (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.599 3.13B (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.625 2.9: (F. Farrell) 990522.635 2.47I (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.635 2.57R (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.635 2.80V (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.635 2.85U (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.635 3.11B (A. Gilmore (from IAUC)) 990522.769 3.1 (D. Overbeek) 990523.042 2.7 (N. Falsarella)
日本からは観測が非常に困難ですが、南の地方であれば夕方の薄明中の南天地平線近くにかろうじて観測できるかも知れません(南中時の高度はカノープスとほぼ同じです)。
VSNETに以下のページを用意しています。世界中から報告される光度変化の様子をJava言語を用いてリアルタイムにグラフで見ることができます。
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/nvel99.html
南オーストラリアの天文グループ(ASSA)の以下のページに観測用星図が公開されています。