来年夏に肉眼彗星か?

【1999年10月7日 国立天文台天文ニュース(296)】

リンカーン観測所チームは、9月27日の観測で、それまで小惑星状とされていた天体が、見かけ状彗星であることに気付きました。 この彗星は明るさ16等、そのとき「ぎょしゃ座」の五角形の中にありました。 認識符号はC/1999 S4、通称はリニア(LINEAR)彗星です。

暫定放物線軌道に基づいて計算しますと、今は暗いこの彗星も、来年7月には地球に0.37天文単位にまで接近し、2等から3等、場合によっては1等ぐらいにまで増光し、肉眼で見える明るさになる可能性があります。

C/1999 S4

「今世紀最後の肉眼彗星か」などという声も聞かれます。 下記の軌道要素による計算では、7月15日から20日にかけてもっとも明るくなり、「おおぐま座」と「やまねこ座」境界あたりから「こじし座」にかけて移動します。 夕方の西空低く見えるでしょう。 なお、1ヶ月ごとの概略位置は以下の表の通りです。 この表に示した明るさは、ごく簡単な式で計算した大略の見積もりにすぎません。

近日点通過時刻 = 2000 July 18.288 TT   近日点引数 = 152゚.651
昇交点黄経 =  83゚.387  (2000.0)
近日点距離     = 0.71953  AU           軌道傾斜角 = 149゚.934
日付          赤経 (2000.0) 赤緯      地心距離  日心距離  明るさ
                時  分     度  分        AU        AU      等
1999   Oct.10    4  55.1   35  15     3.558     4.135     15.8
       Nov. 9    4  11.3   37  03     2.889     3.803     14.8
       Dec. 9    3   0.6   35  39     2.567     3.461     13.8
2000   Jan. 8    2   0.8   30  53     2.615     3.105     13.3
       Feb. 7    1  33.2   26  50     2.824     2.734     12.6
       Mar. 8    1  28.9   25  16     2.952     2.346     11.7
       Apr. 7    1  36.7   25  47     2.847     1.940     10.4
       May  7    1  49.9   28   3     2.443     1.516      8.5
       June 6    2   6.8   32  51     1.677     1.092      5.5
       July 6    3  36.9   50  22     0.619     0.761      1.0
       Aug. 5   11  59.2   -4  49     0.907     0.803      2.2
       Sep. 4   12  19.0  -16  48     1.890     1.166      6.2

ステラナビゲータをお持ちの方は、以下のページから最新の軌道要素を取得してシミュレーションすることができます。

また、以下のページではLINEAR彗星(C/1999 S4)の動きをJAVAでシミュレーショ ンすることができます。

参照  IAUC 7267(Oct.1,1999) MPEC 99t02(Oct.1,1999)