NEARが暴く小惑星「エロス」
【2000年2月25日 NASA Space Science News (2000/2/19)】
小惑星エロスの「サドル」 2月15日の撮影。この凹みにはクレーターが少ない。 |
NASAの小惑星探査機NEARが小惑星「エロス」の軌道に乗ってから数日がたつが、すでにNEARの探査により重要な成果が得られている。
まず、NEARがエロスを周回する軌道要素から、エロスの密度が2.4g/cm3であることがわかった。これは地球の地殻の密度とほぼ等しい。
NEARが1997年に接近し、撮影した大型小惑星マチルデ(Mathilde)の密度は1.3g/cm3であり、ずっと小さい。マルチデは破片が寄り集まってできていると考えられており、内部には裂け目や空間が多数あるため、密度が小さい。エロスはずっと高密度であるため、マチルデとは起源が異なると思われる。エロスは、惑星になれなかった超大型小惑星が他の小惑星と衝突によって破壊されたときの破片である可能性がある。
また、エロスの表面は多数のクレーターで覆われているため、古いものであると考えられる。おそらく、数十億年前、太陽系の形成期に起源を持つのだろう。
だが、「サドル」と呼ばれる特異な構造にはクレーターが少ない。この部分は、若い構造であるとも考えられるが、20億年前の構造であり、岩やチリが滑ってクレーターが消えてしまっているだけという可能性もまた考え得る。
2月14日に撮影された小惑星エロス 明るい斑点が左手に見られる。また、この画像からは民家ほどの大きさの岩が数個発見されている。 |
さらに、多数の巨岩が発見されているが、これは他の天体が衝突したときにばらまかれたものであると考えられるため、重要。
そして、NEARがエロスと太陽の間の直線上に位置したとき、赤外線分光器からエロスには輝石と橄欖石が特に多く含まれるというデータが得られた。これらは隕石や地球の地殻に多く含まれる、鉄分を含んだ鉱物である。
NEARによる探査はまだ始まったばかりだ。
これから2週間の間に、NEARのX線/ガンマ線分光器と、レーザー測距器が稼動をはじめる。この分光器により、シリコンやマグネシウム、鉄、ウラン、トリウム、アンチモン酸カリウムなどの重要な化学物質の存在を計測することができる。また、レーザー測距器はエロスの精密な形状を明らかにすることだろう。
今後数ヶ月かけてNEARはその周回軌道を徐々に低くしていく。これにより、やがては今より10倍高い解像度での観測が可能になる。
そして今から1年後、NEARの任務終了時点はこのミッションにおける最もエキサイティングな部分となるだろう。科学者らは、ひとつの可能性としてエロスへの着陸を検討しているのだ。
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