宇宙誕生直後を再現する粒子衝突実験が準備中

【2000年3月28日 FLORIDA TODAY Space Online (2000/2/28)

物理学者たちはニューヨーク州ロングアイランドの米国エネルギー省ブルックヘブン国立研究所の新しい重イオン衝突型加速器「Relativistic Heavy Ion Collider(RHIC)」を使って宇宙誕生直後を再現しようとする実験を準備中。

原子核は陽子や中性子で出来ているが、その陽子や中性子もクォークやグルーオンと呼ばれるさらに小さな粒子により構成されている。クォークやグルーオンのふるまいを調べることは原子物理学の最前線であり、どのように宇宙が誕生したかを知る上での鍵をにぎっているのかもしれないのだ。

現在の理論によると、最初の原子は宇宙誕生の瞬間であるビッグバンの約1秒後に出現したと考えられているが、今回の実験は原子誕生以前の宇宙の状態を再現しようとするもの。ビッグバン直後数マイクロ秒に出現するその状態は、3兆度という超高温であり、原子どころか陽子や中性子すら存在せず、クォークやグルーオンがバラバラになった状態であり、クォーク・グルーオン・プラズマと呼ばれる。

この実験では、2〜3週間かけて光速の99.995%まで加速された金の原子核同士を正面衝突させる。これにより、太陽の10,000倍という超高温が作り出される。顕微鏡レベル以下での現象であるので、1回の衝突の総エネルギーは蚊が着陸するぐらいのものであり、危険は無い。しかし、このエネルギーは1mmの100万分の1という微小範囲の空間に放出されるため、原子核をバラバラに引き裂いてしまう。

プロジェクトに関わるイェール大学の物理学者John Harris氏は、「私たちの目標は、クォーク・グルーオン・プラズマを作り出し、実際のそれを調べ、その性質を知ることだ。」と語った。

<関連ニュース>
2000/ 2/23 クォークの分離に成功 (Yahoo!)

<参考リンク>
ビッグバン直後を再現する (日経サイエンス1999年6月号)