チャンドラの観測で遠方銀河の活発な星形成活動が明らかに
【2000年5月18日 Chandra Press Room CXC PR: 00-12】
ペンシルバニア州立大学のNiel Brandt教授らのチームが、NASAのX線宇宙望遠鏡チャンドラを用いて「ハッブル・ディープフィールド北」と呼ばれる領域を長時間観測した。
このチャンドラによる観測では、6つの銀河をX線でとらえることに成功した。X線でとらえられた銀河は、3つの楕円銀河、1つの遠方銀河、1つの近傍渦巻き銀河などで、いずれも中心に巨大ブラックホールを持つと思われる。
そして、領域内にいくつかある活発なサブミリ波源はX線では全くとらえられなかった。これらのサブミリ波源は、ダストを多く含む遠方銀河。活発な赤外線放射を行なっているが、地球から100億光年以上の距離にあり高速で地球から遠ざかっているため赤外線は長く引き伸ばされ、地球からはサブミリ波として観測される。
このサブミリ波放射の原因は、非常に活発な星形成活動によるものか、または銀河中心の巨大ブラックホールが周囲の物質を引き寄せ加速・吸収する際の放射だと考えられてきた。ブラックホールによる加速・吸収であれば、強力なX線放射も同時に発生しているはずであり、X線は可視光とは異なりダスト雲を容易に貫通するため、チャンドラによる観測でとらえられるはずだった。
今回の観測結果から、サブミリ波源のうち強いX線源となりうるのは15%未満だと推測される。そしてX線で観測できなかったサブミリ波源は、非常に活発な星形成活動を行なっているか、宇宙で最も巧妙に隠されたブラックホールを含むかのどちらかだ。
なお、今回とらえられたX線源はいずれも、それ以前にとらえられたあらゆるX線源より淡いものだ。今回観測チームは1999年12月、チャンドラの進化型CCD分光撮像器(Advanced CCD Imaging Spectrometer; ACIS)を用いて「ハッブル・ディープフィールド北」を約46時間にわたって観測した。