宇宙初期起源のガスが天の川銀河の中心に発見された

【2000年6月30日 space.com (2000/6/28)

電波望遠鏡で巨大ガス雲を研究しているチームが、我々の銀河系(天の川銀河)の中心付近に存在する重水素を、正確に測定することに初めて成功した。そして、彼らが予想したよりも多くの重水素の存在が明らかになった。研究チームの一員で、『ネイチャー』誌の6月29日号で発表された研究報告の著者の一人であるDonald Lubowich氏(アメリカ物理学会、ホフストラ大学)によると、これは、ひじょうに古いガスが天の川銀河に流れ込みつづけてきているという証拠であり、そしてこれらの重水素は、100億〜120億年前に形成されたもので、宇宙誕生時、または我々の銀河系の形成期に起源を持つ可能性があるという。

多くの研究が、全ての重水素は、130億〜150億年前、宇宙誕生の瞬間である「ビッグバン」から2〜3分の間に形成されたと結論している。また、炭素より重い原子は、それから10億〜20億年後、恒星の内部での核融合反応により形成された。ビッグバンの時期から残されているガスの重水素と水素の比を調べることにより、初期宇宙における「通常の物質」の密度がわかる。多くの重水素は、恒星内部での核融合反応によりヘリウムに変化しているため、新しいガスには重水素は少ない。

Lubowich氏によると、彼らが得た重水素の測定結果は、「通常の物質」が宇宙の質量全体のごく一部であるとした場合に想定される量と一致するという。宇宙の質量の大半は未だ正体がよくわかっていない「ダーク・マター(暗黒物質)」や「暗黒のエネルギー」が占めることになる。また、同氏によると、重水素の測定結果は、天の川銀河が過去「クエーサー」と呼ばれるひじょうに明るい銀河であったとするには、全く少ないという。

また、同じく研究チームの一員であるMichael Turner氏(シカゴ大学の宇宙物理学における代表)によると、今回の測定結果は、全ての重水素はビッグバンで形成されたとする説を支持するものだという。

Lubowich氏らは、アメリカ電波天文台のアリゾナ州キットピークにあるミリ波電波望遠鏡を用い、「いて座A」と呼ばれるガス雲を観測した。「いて座A」は天の川銀河中心からおよそ32光年の位置にある。天の川銀河は直径およそ10万光年で、我々の太陽系は天の川銀河中心からおよそ2万5千光年に位置する。