VLTの4号機がファーストライト!

【2000年9月4日 ESO Press Release 18/00 (2000.9.4)

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の大型望遠鏡VLTの4号機(最終号機)「YEPUN(シリウスを意味する)」は現地時間9月3日21時39分(日本時間午前10時39分)、何枚かの調整用テスト画像の撮影ののち、天の川の「や座」と「わし座」の中間の天空にむけられた。ガイド星が確保され、主鏡を最適な状態に保つ能動光学系がすばやく主鏡の状態を最適化し、21時44分、カセグレン焦点に設置されたテスト用カメラのシャッターが30秒間、開けられた。そして21時45分53 秒、制御室のモニターに惑星状星雲「He2-428」の姿が写し出された。「悪くない!」「素晴らしい!」といった言葉が制御室に次々とあふれる。「YEPUN」のアストロノミカル・ファーストライト(調整以外での目的での天体の初観測)の瞬間だった。南米チリ北部のパラナルに建築中だった4基の8.2mVLT望遠鏡群はついに全機がそろった。15年近くにもわたる長い道のりだった。

このファーストライト画像を撮影したとき、望遠鏡の角度は天頂から44度で、得られた画像の分解能は0.9秒角と測定された。この値は、望遠鏡ドーム外に設置された、大気の揺らぎを監視している望遠鏡で測定されたものと全く同じだった。風が少し吹いていた。

観測チームは続いて、3種類のフィルターを用いてより長い時間の露光を行ない、カラー合成画像を得た。

VLT4号機「YEPUN」のファーストライト画像。惑星状星雲「He2-428」

上がその画像で、恒星が寿命を終える過程で恒星から放出された、かつての恒星のなれの果て、惑星状星雲「He2-428」の姿。この天体の地球からの距離は6000〜8000光年。銀河面から2度しか離れていない星の密集した領域に位置する。

露光は、B(青)フィルターが10分、V(緑)フィルターが5分、R(赤)フィルターが3分。画角は横88秒角、縦78秒角。分解能はB,V,Rそれぞれ0.9秒角。右下方向が北、左下方向が東。天頂からの望遠鏡の角度は44度。90度離れた方向には月齢5の月が明るく輝いていた。

この晩、矮小銀河「NGC6822」および渦巻き銀河「NGC7793」の画像も撮影された。

来年中旬には、2台のVLTを連動させて、より高い感度と解像度の実現を目指す「VLT干渉望遠鏡(VLTI)」のファーストライトが予定されている。VLTは最終的には4台すべてのVLTを連動させて16m級望遠鏡に匹敵する性能を得ることを目指す。

画像提供: ESO