X線天文衛星「あすか」復旧失敗、来年中盤に大気圏再突入へ
【2000年9月27日 NASA (2000.9.20)】
日本の宇宙科学研究所(宇宙研/ISAS)と米航空宇宙局(NASA)の共同によるX線天文衛星「あすか(ASTRO-D/ASCA)」は2000年7月からスピン状態に陥り、セーフモードになっていたが、NASAは9月20日、「あすか」の復旧の可能性がひじょうに悲観的であるという見解を発表した。
「あすか」は1993年2月20日に宇宙科学研究所のM-3SIIロケット・7号機によって打ち上げられ、さまざまな科学的成果を残してきた。打ち上げから7年半が経過し、その間に軌道は徐々に下がりつづけてきていたが、動作は順調だった。しかし2000年7月14日に強力な太陽フレアが発生、その影響で7月15日からの2〜3日間、地球に激しい磁気嵐が発生した。磁気嵐の影響で地球大気が所々で膨張、「あすか」の軌道付近の大気圧は通常の7倍にも達した。大気による摩擦力は軌道制御装置の制御能力を超え、「あすか」はスピン状態に陥った。そして本来太陽に向いているべき太陽電池パドルは太陽の方向を外れ、電力供給が低下し、ついにはバッテリーが完全に枯渇した。
その後、姿勢を立て直してバッテリーを再充電させるためにあらゆる努力が試みられたが、結局何の改善もみられなかった。NASAによると、バッテリーに回復不能な深刻なダメージが生じてしまっている可能性が疑われるという。
現在「あすか」は周期およそ3分のスピン状態にあるが、太陽に当たる位置にあるときにのみ、太陽電池パドルからの直接の電源供給により「あすか」の姿勢情報は得られるため、今後も姿勢の監視だけは続けられる。だが、NASAの発表によると観測可能な状態への復旧の可能性はほぼゼロに等しく、7月15日以降に予定されていた観測は全てあきらめなければならないという。より詳しい情報は、11月の「HEADミーティング」において発表される予定。
設計寿命のほぼ倍もの長きにわたって観測活動を続けてきた「あすか」だが、来年中盤には地球大気圏に再突入して燃え尽きるとみられる。
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