すばる望遠鏡の波面補償光学装置AOがファーストライト
【2000年12月18日 すばる望遠鏡 (2000.12.12)】
ハワイ・マウナケア山頂に設置されているすばる望遠鏡 (国立天文台・ハワイ観測所) の波面補償光学装置 AO (Active Optics) がファーストライト (初観測) を迎えた。AO は、大気のゆらぎの影響による像の劣化を打ち消してひじょうにシャープな像を得るための装置であり、大気のゆらぎをモニターする波面センサーと、そのゆらぎ打ち消すを可変形鏡からなる。11月にすばる望遠鏡のカセグレン焦点に設置した AO に、近赤外線分光撮像装置 IRCS を取りつけ、そして12月1日から3日にかけ試験観測が行なわれた。
画像は、AO + IRCS による恒星像。左は AO の機能を用いずに撮影したもの、そして右が AO を用いて撮影したものである。どちらも同じ恒星を同じ露出時間で撮影したものだが、AO を通したものの方が圧倒的にシャープに写っているのがよくわかる。
恒星像の半値全幅 (恒星像の明るさが半分になる部分の直径で、望遠鏡で分解できる角度の限界を表す) は、左の AO を用いていないものが 0.33 秒角なのに対し、右の AO を用いたものはなんと 0.073 秒角 (ハッブル宇宙望遠鏡と同等以上) である。右の恒星像の周りにはリングが見られるが、これは像が望遠鏡の回折限界 (観測している波長と主鏡の口径で決まる望遠鏡の理論的性能の限界) にほぼ達していることを示す回折縞だ。つまり、AO を用いることにより、大気のゆらぎの影響をほぼ完全に打ち消すことができるということである。
AOは、IRCS またはコロナグラフ撮像装置 CIAO (Coronagraphic Imager with Adaptive Optics) との組み合わせで用いられる。そして CIAO との組み合わせでは、恒星の周りを巡る惑星を直接検出することを目指している。
<撮影データ>
望遠鏡: すばる望遠鏡、カセグレン焦点
観測装置: AO + IRCS
観測日: 2000年12月3日
半値全幅: 左(AO-OFF)= 0.33 秒角 / 右(AO-ON)= 0.073 秒角
観測波長: K (2.2μm)
ガイド星: α-And、 V2.1 等級 (ND フィルタ使用)
露出時間: 9 秒
視野: 1.5 秒角 x 1.5 秒角
(1画素あたり 0.023 秒角)
画像提供: 国立天文台