[HST] 近傍渦巻き銀河M51のクローズアップ
【2001年4月9日 STScI-PRC01-10 (2001.4.5)】
これは、渦巻き銀河「M51」の姿である。ハッブル宇宙望遠鏡 (HST) により撮像された画像と、0.9メートルの地上望遠鏡により撮像された画像を組み合わせて作られた画像だ。この画像により、複雑に絡み合う黒い筋の姿がはじめて明らかになった。
「りょうけん座」の方向3100万光年位置する、M51 (別称NGC5194) は、2本の腕を持つ渦巻き銀河を真正面から見た姿だ。2本の腕のうちの1本の先は、小さな伴銀河「NGC5195」につながっており、このことからM51は「子持ち銀河」という愛称で親しまれている。口径10cmクラスの望遠鏡でも2つ並んだ姿が充分楽しめるため、天文ファンにはなじみ深い天体だ。ただし、この画像では、伴銀河NGC5195は視野上部のすぐ外にあり、とらえられていない。
画像で、腕の中央を走る黒い筋は、濃く冷たい星間分子雲により星の光が遮られている部分である。このような星間分子雲は、新たな星を生む原料となる。そして、その黒い筋に沿うように、赤い斑点が散在しているが、これは新たな星が次々に誕生しつつある星生成領域である。
それぞれの星生成領域の中央部は白く明るく輝いているが、これは誕生したばかりの星々からなる星団の光だ。星生成領域の赤い光は、これらの星々が放つ紫外線が周囲の星間分子雲を温めた結果、星間分子雲に含まれる水素ガスが放っているHα光である。
M51での星生成活動は、伴銀河NGC5195の重力の影響が引きがねになっていると考えられている。
今回のHSTの画像から、M51に走る黒い筋には、2本の腕の中央部を走る太い筋のほかにも、細かな筋が複雑に絡み合った構造があることが初めて明らかになった。このことから、渦巻き銀河の生成モデルは再考が必要かもしれない。
また、銀河核をとりまくチリの円盤のようすもはじめて確認された。このチリの円盤が、銀河核に潜む巨大ブラックホールの活動の燃料となっていると考えられる。
Image Credit: NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)
Acknowledgment: N. Scoville (Caltech) and T. Rector (NOAO)