発見された特異変光星はウォルフ・ライエ星

【2001年4月26日 国立天文台天文ニュース (435)

WR104

WR104の回転のようす ケック望遠鏡により1998年4月、6月、9月に撮影された3枚の画像をもとに、中間画像を補完生成して作成。回転周期は約220日。渦巻きの直径はおよそ160天文単位で、太陽〜冥王星間距離の倍程度に相当。(カリフォルニア大学バークレー校による解説ページより)
Credit: U.C. Berkeley Space Sciences Laboratory/W.M. Keck Observatory

特異変光星として発見された星が、すでに知られていたウォルフ・ライエ星WR104であることがわかりました。

愛知県豊橋市の長谷田勝美(はせだかつみ)さんは、新星、変光星などを捜索していて、「いて座」に、長谷田さんとして82番目となる変光星HadV82を新しく発見しました。長谷田さんの測定によりますと、この星は1ヶ月ほどの間に、11.8等から14.5等まで、なんと2.7等もの大きな光度変化をしたということです。

この変光星の調査をさらに進めたところ、この星は、すでに観測されているウォルフ・ライエ星のWR104そのものであることがわかりました。WR104は、1998年4月から6月にかけてハワイの口径10メートル、ケックI望遠鏡でトゥシル(Tuthill,P.G.)たちによって観測された結果、ちょうど勾玉(まがたま)のような形を見せて220日ほどの周期で回転していることがわかった星でした。ガスを噴き出している星が連星の一方として回転しているため、このように見えると考えられ、「渦巻き星」などともいわれましたが、この星がこれほど急激に変光することは知られていませんでした。長谷田さんは、たいへん貴重な現象を観測したのです。なお、長谷田さんは、2000年3月に「たて座新星2000」を発見した方です。ご記憶の方もあるかもしれません。

ウォルフ・ライエ星は、フランスのウォルフ(Wolf,C.G.E.)とライエ(Rayet,G.A.P.)によって1867年に初めて発見された特異星の一種です。高温で明るい星ですが、そのスペクトルには水素が見られず、幅の広いヘリウムの強い輝線が見られることから、外層部の水素がほとんど失われ、中心部のヘリウム層がむきだしになった形の星と思われます。質量の大きい星が進化する過程で、恒星風の吹き出しのため、外層の水素のほとんどが吹き飛ばされてしまったものでしょう。したがって星自体からは現在も激しくガスが噴き出しています。噴き出すガスの量は1年間に太陽質量の10万分の1から1万分の1にも達するので、放出した多量のガスが星自体を取り巻いています。惑星状星雲として見えているものもあります。そして、近い将来に超新星爆発を起こすことも想定されているこの種の星がウォルフ・ライエ星です。銀河系内に数100個発見されていますが、未発見のものもまだたくさんあると思われます。

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