かつて火星は水の惑星だったかもしれない
【2001年12月10日 Goddard Space Flight Center Top Story】
NASA の遠紫外線分光衛星 FUSE の新しい観測結果から、かつて火星は水に覆われていたかもしれないことがわかってきた。
この観測では、火星の上層大気に含まれる水素分子を初めて検出した。水素分子には、普通の H2 のほかに重水素(HD)と呼ばれるものがある。(普通の水素原子 H は陽子 1 つと電子 1 つから構成され、重水素原子 D はさらに中性子 1 つが加わる。)重水素の量は 1997 年にハッブル宇宙望遠鏡による観測で調べられていたが、今回は普通の水素の量が測られたのだ。これらの 2 タイプの水素は、それぞれ水分子(H2O)と重水分子(HDO)が太陽の紫外線によって破壊されて生成される。
研究者たちは、現在の水素分子と重水素分子の割合を実現するためには過去にどのくらいの水があったことになるかを計算した。その際、現在の水の量としてはマーズ・グローバル・サーベイヤーが測定した火星の極冠に存在する氷の量を用いた。結果として、火星全体に均等に水を分布させれば深さ 1.25km になるような海が存在していたという結論が得られた。マーズ・グローバル・サーベイヤーの観測では火星の北半球は広大な盆地になっているが、この盆地は昔はほとんどが海底にあったことになる。
かつてはこれほど大量の水があったのに、現在はほとんど全部なくなってしまっているように見える。一体それらの水はどこに消えてしまったのか、そして、実際には現在の火星にどれほどの水が残っているか、これらの謎を解くことが火星探査の重要な目的の一つである。