銀河団中に見つかった巨大な空洞
【2002 年 1 月 11 日 Chandra Press Room】
NASA の衛星チャンドラ X 線天文台の観測により、銀河団で起こった爆発の「幽霊のような」名残が見つかった。どうやら銀河団では非常に高エネルギーの爆発現象が繰り返し起こっているようである。
この銀河団は Abell 2597 と呼ばれるもので、みずがめ座にある。画像左上と右やや下に見られる(幽霊のようにぼんやりとした)空洞は、銀河団の中心近くにある銀河にある太陽の数百万倍の質量をもつブラックホールに物質が落ち込んで発生した、非常に強力な爆発によって作られたものだと考えられている。この爆発で高エネルギー粒子のジェットが発生し、銀河団中の高温ガスの中に空洞ができたのだ。ジェットはまわりの物質よりも軽いので、ちょうど水中の空気が表面へと移動するのと同じように、空洞は銀河団の端へと追いやられていく。この爆発現象は一度だけの現象ではなく、何度も起こるらしい。
これらの空洞の中には一見何もないように見えるが、高温ガスや高エネルギー粒子、磁場などで満たされている。そうでなければ、周りからの圧力で空洞がつぶされてしまっているはずだ。
物質はブラックホールの周りを回転しながら落ち込んでいくが、この際に強い電磁場が発生する。この磁場がたくさんの空洞によって銀河団全体に運ばれていき、銀河団の強い磁場を生み出しているのかもしれない。