ミリ秒パルサーの誕生現場を初めて発見か
【2002年2月18日 ESA News】
ESA(ヨーロッパ宇宙機関)とNASAのハッブル宇宙望遠鏡とオーストラリアのパークス電波望遠鏡による観測により、高速で自転するパルサーと膨れた赤い伴星から構成されるとても変わった連星系が見つかった。おそらく誕生直後のミリ秒パルサーを見ているのだろうと考えられている。
このパルサーは、さいだん座の球状星団NGC 6397にあり、1秒間に274回転している。これまでに90個以上のミリ秒パルサーの存在が知られているが、どのような過程を経てミリ秒パルサーになるのかという理論を裏付ける観測はまだなかったのだ。
一般的に考えられているミリ秒パルサー誕生のシナリオは次のとおりである。年老いたゆっくりと回転している中性子星が、伴星(典型的には赤色巨星)から流れ込む物質を吸収してエネルギーを受け取ることによって高速回転するようになり、1秒間に数百回回転するミリ秒パルサーが誕生する。一方で伴星はほとんどの物質を使い果たして白色矮星になると考えられている。
今回の観測では、伴星は白色矮星ではなく膨張した赤い星だった。大きさは、白色矮星の約100倍、同じ質量を持つ普通の恒星の5倍である。つまり、これから白色矮星へと進化していく前の段階にあるということだ。赤くて膨張した星が伴星のミリ秒パルサーが見つかったことで、ミリ秒パルサーの誕生と進化に関する理論が裏づけられたことになる。