彗星のダストトレイルを可視光で検出することに成功
【2002年5月22日 東京大学大学大学院理学系研究科 木曽観測所】
東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡を用いて彗星の研究を行っていた研究グループが、彗星のチリの集まりであるダストトレイルを検出することに成功したと発表した。可視光でのダストトレイルの検出は世界初のことである。
ダストトレイルとは、彗星の軌道に沿ってチューブ状に集まっているチリの雲のこと。このダストトレイルに地球が突入すると流星群が起こる。例えば、昨年11月に大出現を見せたしし座流星群はテンペル・タットル彗星のダストトレイルに地球が突入することによって起こったものだ。流星群が起こることや宇宙からの赤外線による観測などからダストトレイルが存在することは知られていたが、極めて暗いために地上から可視光で検出した例はこれまでなかった。
今回検出されたのは、周期が約6.5年のコプフ彗星のダストトレイルである。解析の結果、ダストトレイルに含まれるチリの大きさがおよそ1cmであることやチリの反射率が非常に低いことなどが明らかになった。また、コプフ彗星のダストトレイルは非常に密度が高く、もし地球がこのダストトレイルに突入すると毎秒千個以上にも達する流星が見られることもわかった。ただ残念なことに、地球の軌道とコプフ彗星の軌道とが交わることはないため、実際にはこのような流星群は見られないとのことだ。
研究グループでは今後も観測や解析を行い、ダストトレイルに含まれるチリの性質などをより詳しく調べていきたいとしている。さらに、大型望遠鏡や衛星によって黄道光などを観測し、惑星間に分布しているチリの研究を総合的に進めていきたいと述べている。