ハッブルがとらえた「網膜星雲」IC4406

【2002年6月14日 STScI Press Releases

NASAのハッブル宇宙望遠鏡が2001年6月に撮影した、美しい惑星状星雲の画像が公開された。きれいに左右対称の形をしているこの星雲は、人間の眼のように見えるので「網膜星雲(Retina Nebula)」と呼ばれている。

(IC4406の画像)

網膜星雲 IC4406。クリックで拡大(提供:NASA and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)、謝辞:C.R. O'Dell (Vanderbilt University))

この惑星状星雲は南天のおおかみ座にあり、地球から1900光年離れている。多くの惑星状星雲と同様、対称性の高い形をしている。この画像で写っているのは、惑星状星雲の中心の星から吹き出されたガスやチリでできている巨大なドーナッツ状の構造を真横から見ている姿だ。真上から見れば、有名なリング星雲 M57のように見えるだろう。

星雲中のガスは、中心星からの強烈な放射を受けてイオン化し、輝いて見える。画像では、酸素原子ガスからの光を青、水素は緑、窒素は赤で表している。つまり、色の違いはその場所のガスの成分の違いに対応している。また、中性の(電離していない)ガスからは電波が放射されているが、これはハッブルでは見ることができない。

この星雲で興味をひくのは、中心部分に見られる格子状の暗い線だろう。幅がおよそ160天文単位(240億km)あり、ちょうど、高温で輝いて光って見えている領域と電波望遠鏡で見える中性ガスの領域との境界に位置している。ガスやチリの密度が非常に高く、光を遮っているため、暗い線となって浮かび上がって見えているのである。この密度の濃い部分が将来どうなるのか(生き残るのか、消えてなくなってしまうのか)は、まだ謎に包まれている。

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