国立天文台のVERA望遠鏡が本格的な観測を開始

【2002年11月25日 国立天文台天文ニュース(601)

国立天文台のVERA(ベラ)望遠鏡が、11月19日から、この春完成したばかりの石垣島観測局など4局全てを合わせて、本格的な観測を開始しました。

VERAとは、VLBI Exploration of Radio Astrometryの略で、ギリシャ語では、「真実」という意味をもっています。VERA計画は、日本国内に口径20メートルの電波望遠鏡を配置して、相対VLBIの手法により銀河系内のメーザー天体の位置と運動を三角測量を使って、これまでより100倍高い精度ではかり、銀河系の立体地図を作成する観測プロジェクトです。

VERA計画は、国立天文台で10年以上かけて準備されてきたプロジェクトで、観測精度を上げるために大気の揺らぎの影響を除去する位相補償型VLBIという手法を確立したり、二つの天体を同時に観測できる2ビーム視野回転機構など世界初の技術開発を進めてきました。

平成11年度の補正予算で水沢観測局(岩手県水沢市)、小笠原観測局(東京都小笠原村父島)、入来観測局(鹿児島県入来町)の3局の建設が認められ、平成12度補正予算で残る石垣島観測局(沖縄県石垣市)の建設も認められました。

日本列島のほぼ全域に広がるように置かれた四つの20メートル電波望遠鏡を組み合わせて同時に同じ天体を観測すると、直径2300キロメートルの電波望遠鏡で観測したのと同じ能力を発揮することができます。天体を細かく見る能力は、10マイクロ秒角(角度の1度の10万分の1)で、月面上に置かれた一円玉の大きさを判別できる精度になります。

この春から四つの観測局を合わせた試験観測や機器の調整が行なわれていましたが、半年あまりの試験観測の結果から、電波望遠鏡や観測機器の期待された性能が確認されたため、いよいよ、11月19日から銀河系の立体地図作りに向けた本格的な科学観測を開始しました。

銀河系の立体地図作りは10年以上かかる長期計画ですが、それまでにも銀河系内のいろんな場所での星の位置や動きを調べたり、星の誕生やその成長過程を観測的に明らかにすることになっています。また、VERA計画によって、なぞの物質ダークマターの存在や分布が明らかにされることが期待されています。

VLBI = Very Long Baseline Interferometer; 超長基線干渉計

注:この天文ニュースは、国立天文台VERA推進室/野辺山宇宙電波観測所の宮地竹史(みやじたけし)さんにいただいた原稿より作成しました。

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