チャンドラが撮影した、宇宙高速道路の玉突き衝突事故
【2002年12月13日 Chandra Photo Album】
NASAのX線観測衛星チャンドラにより、ブラックホールの両側に超高温のローブ(広がり)があるのが観測された。中心のブラックホールから遠く離れたところに高温のローブがあるのは、ブラックホールから高速で放出されたガスの塊が低速のものと衝突し加熱されているためだと考えられている。
この天体は地球から16,000光年離れたわし座の方向にあり、ブラックホールと重い恒星の連星だと考えられている。ブラックホールから0.25光年離れた両側には、温度が5千万度にも達するガスのローブが存在している。
これまでにチャンドラやハッブル宇宙望遠鏡で似たような天体を観測したときには中央のブラックホールからこれほど離れたところに高温ガスのローブは見つかっておらず、ブラックホールから数百万kmより遠くではガスは冷えてしまっていると考えられていた。今回観測された高温ガスのローブは、ブラックホールのすぐそばから光速の4分の1という速さで放出されたガスの塊が以前放出されたガスと玉突き衝突を起こして加熱された部分だと思われる。長期にわたって光学観測した結果、中心のブラックホール近くから数分おきに弾丸のようにガスの塊が噴出しているようすも捉えられており、この衝突モデルがおそらく正しいことを裏付けている。