国立天文台4次元デジタル宇宙実験シアターの試験公開
【2003年5月22日 国立天文台・天文ニュース(637)】
国立天文台三鷹キャンパスでは、今年6月からほぼ月に1回のペースで、「4次元デジタル宇宙実験シアター」の一般公開を試験的に開始します。4次元デジタル宇宙実験シアターは、科学技術振興事業団計算科学技術活用型特定研究開発推進事業の「4次元デジタル宇宙データの構築とその応用」(研究代表者:海部宣男(かいふのりお))により、国立天文台を中心に現在開発中の、宇宙イメージの立体投影実験設備です。
この実験シアターでは、135度の角度で接続された1.8メートル四方のスクリーン3面に6台のコンピュータによる映像を同時投影し、偏光眼鏡の使用で、没入感と広がりのあるダイナミックな立体宇宙を楽しむことができます。「4次元」とは、空間3次元に時間1次元を加えた4次元を意味しています。
「4次元デジタル宇宙データの構築とその応用」プロジェクトは、空間的にも時間的にも膨大で実感しにくい宇宙を、観測データや計算機シミュレーションにより科学的デジタルデータとして再構築し、それを立体映像に表現することで宇宙の理解を進める、長期的な開発研究の第一歩と位置付けられています。
このプロジェクトは、次の2つの目標をかかげています。
第1は、天文学の最新成果や広大で多様な宇宙を、わかりやすく楽しくインパクトある立体映像表現で一般の人に伝えることです。この方法は、学校教育はもちろん、社会教育やエンタテインメント等広い可能性を秘めています。
第2は、シミュレーション計算やデータの再構築により、天文学や関連分野の研究者に現実には得られない時間変化を含む立体宇宙の視点を提供し、高速ネット等で配信することで、さまざまな研究に役立てるということです。
このプロジェクトは平成14年のスタート以来、すでに多くのデジタル宇宙立体画像プログラム(コンテンツ)を試作・実験して来ました。「バーチャルすばる望遠鏡」、「銀河系の中性水素分布」、「宇宙の大規模構造」、「巨大ブラックホールまわりのガスの運動」、「若い星から噴出するジェット」、「地球型惑星の誕生」、「月の起源」などです。また、基本・教育用コンテンツとして、3次元プラネタリウム映像「ヒッパルコス・プラネタリウム」と、惑星運動実験映像システム「ケプラー・シミュレーター」を試作しています。
これらの試作コンテンツはすべて、国立天文台本部(三鷹市)で開発に使用している実験シアターで、迫力のある動く立体映像として見ることができます。平面映像としてはすでに一部、各地の科学館等で試験公開をしていますが、今後三鷹キャンパスの実験シアターを用い、コンテンツの一部を試験的に公開していくことになりました。ただし、開発途上のシステムの試験的公開であることから、どうしてもスケジュールが限られます。また、小さな実験システムなので、一度に見られる人数は20人が限度です。
コンテンツの紹介や今後の上映予定については、以下の国立天文台のウェッブ・ページをご覧下さい。