チャンドラが捉えた宇宙のイルミネーション

【2003年12月23日 Chandra Press Room

NASAのX線観測衛星チャンドラが、巨星の崩壊後に作られた輝くシェル構造を捉えた。この天体は、大マゼラン雲の中にある超新星残骸、N36Aだ。

(N36Aの画像)

超新星残骸N36A。チャンドラによるX線画像(青)と可視光(緑)、電波(赤)で捉えた画像とを合成(提供:X線:NASA/CXC/Rutgers/J.Warren et al、可視光:NASA/STScl/U. Ill/Y.Chu、電波:ATCA/U. Ill/J.Dickel et al.)

X線は、超新星爆発の際におきた衝撃波で物質が摂氏1000万度程度に熱せられ、放射されている。この超新星残骸の年齢は、2000から5000歳ほどの範囲と考えられている。

中心に見える三角形の部分は、X線では穴のように何も見えないが、可視光や電波での観測では明るく見える。この部分では、地球に一番近い側にある低温高密度のガスやちりによってX線が吸収されているためにX線が見えなくなっており、いわばX線の盲点となっている。X線で捉えた像と可視光や電波による像を比較してみると、衝撃波が巨大なガス雲を飲みこんで(巻きこんで)いることが考えられる。このような衝撃波とガス雲との衝突により、新しい星形成活動が始まるのである。

また、X線によって捉えられた青いもやもやとした部分は、爆発の際に高速で吹き飛ばされたかけらではないかと考えられている。このような特徴は、他の超新星残骸では、唯一「ほ座」の超新星残骸でしか見られないものだ。別の可能性としては、爆発の場所から数光年離れた場所にあった小質量のガス雲が衝撃波によって吹き飛ばされたものということも考えられる。

なお、合成前のX線による画像や、可視光、電波それぞれによる画像もhttp://chandra.harvard.edu/photo/2003/n63a/more.htmlで公開されている。