これまででもっとも遠い、130億光年かなたの銀河が発見された

【2004年2月16日 HubbleSite NewsCenter / KECK OBSERVATORY NEWS

NASAのハッブル宇宙望遠鏡とケック望遠鏡による観測から、130億光年かなた(ビッグバンから7.5億年後)という、これまでに発見されている銀河のなかでもっとも遠いものが発見された。

(銀河団Abell 2218と重力レンズ効果を受けた遠方銀河の像を捉えた画像)

銀河団Abell 2218と、銀河団による重力レンズ効果で変形して見えている遠方の銀河。画像左と下の線で囲まれている赤い天体が、新たに発見された130億光年かなたの銀河(赤方偏移パラメータz=約7)。1つの天体がレンズ効果で2つ+1つの像に見えている。クリックで拡大(提供:ESA, NASA, J.-P. Kneib (Caltech/Observatoire Midi-Pyrénées) and R. Ellis (Caltech))

これまでで最遠の銀河は、われわれからおよそ20億光年離れたところにある銀河団Abell 2218をハッブル宇宙望遠鏡のACSカメラで長時間観測したデータから発見された。この銀河団より遠方に位置する天体からの光は、銀河団による重力レンズ効果を受けて、変形したり増光して見えたりする。この効果のおかげで、普通には見ることのできない、はるか遠くの暗い銀河の姿を捉えることができたのである。今回の銀河の場合、重力レンズ効果で25倍も増光している。また、これほど遠くにある天体だと、可視光は赤方偏移の影響を受けて赤外線として観測されることになる。距離は、ハッブル宇宙望遠鏡やケック望遠鏡による分光観測から推定されている値だ。

今回発見された銀河は、いわゆる宇宙の暗黒時代の終わりころに若い銀河として輝いていたと考えられている。暗黒時代とは、ビッグバンから30万年ほど経った後から10億年ほど続いたと考えられている時期で、そのころの宇宙に存在していた大量の水素のために星や銀河からの光を観測することができない期間のことだ。

高解像度の観測により、この銀河の大きさが直径2千光年とひじょうに小さいことや、とても活発に星形成活動を行っていることがわかった。また、水素の輝線スペクトルが見られず、星形成中の近傍銀河よりはるかに強力な紫外線を発しているという興味深い特徴も明らかになっている。このように遠くの天体の特徴を調べることによって、宇宙の暗黒時代を終わりに導いた若い星々の特徴がわかるかもしれない。初期宇宙の天体の特徴を知ることで、どのようにしてこの宇宙が再電離し暗黒時代が終わったのかという謎を解き明かすための重要な手掛かりが得られるのだ。

研究チームは今回の観測の成功を受け、今後も重力レンズ効果を利用した遠方天体の検出を計画中とのことだ。望遠鏡は、まさにバーチャルなタイムマシンとして、今後もはるか昔の初期宇宙の姿を見せてくれそうである。