火星に、やはり生命は存在しない!?論争続く火星起源の隕石「ALH84001」
【2004年5月10日 NASA News】
1984年に南極で発見された火星起源の隕石「ALH84001」について、1996年に地球上のバクテリアがつくるような構造が見られて以来、火星の生物の痕跡であるのかないのか激しい議論が続いている。しかし、最近の実験によって無生物的なプロセスでも同様の構造がつくられることがわかり、生物起源説の立場は微妙になってきたようだ。
火星起源の隕石「ALH84001」については、2000年にも、隕石中の炭酸塩の粒に見られた直線状の構造をした磁鉄鉱の結晶が、地球に存在する「MV-1」と呼ばれる種のバクテリアが体内で生成するものと酷似していることが発見された。これによって、火星上の生物の存在の可能性は強まってきた。
しかし今回、無生物的なプロセスによる磁鉄鉱結晶の生成が成功した。実験の結果から、MV-1とALH84001では、細長い結晶に違いが見られたということだ。また、具体的な生成過程として、ALH84001にも見られる鉄を含んだ炭酸塩が、高熱の環境下で分解されることで、磁鉄鉱の結晶を生み出すこともわかった。さらに、無生物的プロセスによる生成では、結晶そのものの生成だけでなく、磁鉄鉱中に見られる特徴まで再現されたということだ。
こうなると、生物の痕跡については大きな疑念が生じてくる。しかし、火星の生物の痕跡だとする研究チームは、実験結果はALH84001のすべての特徴を説明できるものではないとして、あくまでも生物起源説を主張している。
この生命の痕跡論争は、どうやら火星からのサンプルが直接地球に送り届けられる日まで続くようだ。