宇宙の暗黒時代を照らし出す、新しい観測方法が明らかに
【2004年5月11日 CfA Press Release】
ハーバード・スミソニアン天体物理センターの理論専門家が、宇宙の暗黒時代について新しい観測方法を発表した。その解像度は、WMAP衛星の千倍に相当するものだという。
宇宙の暗黒時代を研究しようとすると、必ず根本的な問題にぶつかる。それは、「宇宙で最初の星が輝き始める以前に存在していた物質をどのように観測するか」というものだ。今回の発表によれば、暗黒時代に存在していた宇宙で最初の原子が落とした影を捉えればよいということだ。
宇宙背景放射の光子の一部は、水素と出会うことで吸収される。そこで、ひじょうに光子の少ない領域(水素によって影になっている領域)を探せば、星や銀河形成のずっと以前、宇宙誕生から2千万年から1億年後という初期宇宙の物質の分布が決定づけられるというものだ。マイクロ波背景放射には大量の情報が刷り込まれており、じゅうぶん正確な宇宙の初期状態を知ることが可能になる。
また、マイクロ波背景放射のつくる影を探ることによって、宇宙のより小さな構造を探ることも可能になるという。今回の方法による観測では初期宇宙における300光年サイズの構造を見ることができるが、これはWMAP衛星の千倍の解像度に相当する。さらに、暗黒物質の誕生についても、ニュートリノやまったく新しいタイプの粒子が重要な役割を果たしたのかどうかなど、情報がもたらされることになるという。
しかし、手前に存在するさまざまな物質による干渉のため、実際の電波観測は次世代電波望遠鏡(LOFAR(Low Frequency Array)や、SKA(Square Kilometre Array))にゆだねられることになるという。観測には労苦が伴うだろうが、それだけの価値は充分だろう。研究者の言葉を借りれば、「目指す観測対象は、金の鉱脈そのものだ」ということだ。