暗黒物質と暗黒エネルギーは、単一未知の力?
【2004年7月14日 Vanderbilt University News】
理論物理学者ロバート J. シェラーによって、暗黒物質と暗黒エネルギーの謎を半減させるかもしれない新しいモデルが提唱された。この理論では、暗黒物質と暗黒エネルギーは単一の未知の力であり、それそれが別々の様相を見せているのだとされている。
長年、多くの専門家が暗黒物質と暗黒エネルギーを統一しようとして数多くの問題にぶつかってきたが、同氏はそれらの問題を避けたシンプルな理論を提唱した。発表されたモデルはスカラー場(温度や気圧など数値の大きさだけが関係する場のこと)に基づくもので、過去には宇宙のインフレ−ションを説明するために宇宙論研究者によってこの場が使用されたこともある。今回の理論では、K-エッセンスという次世代スカラー場ともいえる考えが使用されている。
シェラー氏によれば、暗黒物質が引き起こすのと同様の効果をK-エッセンスの場が作り出すのだということだ。多くの専門家は、暗黒物質と暗黒エネルギーが違う振る舞いを見せることからこの二つを区別して考えてきたが、同氏が採用したK-エッセンス場は、時間と共にその振る舞いを変化させる。ある段階においては凝集し、その際には目に見えない物質と同様の効果を起こすが、また次の段階では宇宙空間にばらばらに広がり、暗黒エネルギーと同じ特徴を見せるというのである。
シェラー氏のモデルは、多くの利点を持つ反面、当然欠点もある。究極の部分で微調整が必要な点や観測結果との一致を確認する必要がある点など、まだこれからの課題も残っている。今のところ、新しいモデルに対して他の専門家の態度は懐疑的である。