100億歳の星から放出されるガス ― われわれの太陽の運命を示す?
【2004年9月22日 東京大学 天文学教育研究センター】
東京大学の天文学教育研究センターの松永氏、中田教授らが、球状星団にある年老いた星から放射される一酸化珪素メーザーという強い電波を世界で初めて観測した。球状星団にある星はガス放出をする前に膨張が止まってしまうと考えられていたため、今までの常識をくつがえす発見となった。
太陽のような星がその一生の最期にどこまで膨張するかは、恒星のモデル計算からも直接求めることができていない。塵にすっぽり覆われたような赤い星は、今まで球状星団には見つかっていなかったため、巨大なガスの放出を起こす前に白色矮星になると考えられてきた。
松永氏らの研究グループは、恒星の最期の姿を捉えるべく、銀河系の中でもっとも古い100億年から130億年前に誕生した球状星団の観測を進めてきた。そして、近赤外線観測装置を使った最初の観測から、球状星団の方向に10個あまりの赤い星を発見した。
さらに、これらの天体が球状星団に属する天体であるかどうかを野辺山の45m電波望遠鏡を使って確認し、5個の赤い星巨星から「メーザー」とよばれる強い電波を受信した。メーザーは進化の最後に膨張した星が大量のガスを放出する際の電波で、星全体が厚い塵に覆われていることを示している。また、周波数から求められる天体の速度も球状星団のものと一致したことから、球状星団の一員であることも確認されたのだ。
球状星団にある星はガス放出をする前に膨張が止まってしまうと考えられていたため、この発見はこれまでの常識をくつがえすものとなった。さらに、およそ100億年の寿命を持つと考えられている太陽も同様の運命をたどると予想させるもので、具体的な観測結果から太陽の将来が研究された意義は大きい。今後これらの天体を中心にした研究の進展が期待される。