私たちの世界の将来の姿? ― 銀河の衝突、星の誕生
【2005年9月7日 PPARC News】
ジェミニ北望遠鏡に搭載されたGMOS(Gemini Multi-Object Spectrograph)による銀河 NGC 520の画像が公開された。NGC 520は、2つの銀河が合体した銀河だ。われわれの天の川銀河も、やがてお隣のアンドロメダ銀河と衝突し、以前とはまったく異なる姿の銀河へと変貌する運命にあるのだ。
我々から1億光年離れたうお座の方向にある銀河 NGC 520は、特徴的な形をしている。この天体は1つの銀河ではなく、2つの銀河が衝突・合体したものだからだ。画面手前に見えるちりの筋と、中央下寄りにある尾のような構造は、二つの銀河が重力により引っ張られ、大きく変形してしまった結果である。われわれの天の川銀河も30億年後には、お隣のアンドロメダ銀河と衝突し、その形を大きく変化させながら、やがて1個の楕円銀河へ姿を変えてゆくと考えられている。NGC 520は、そうした天の川銀河の運命を暗示しているとも言えるだろう。
この画像は、ジェミニ北望遠鏡に搭載されたGMOSが今年7月14日に捉えたもの。GMOSは、2001年の設置以来、遠方に位置するかすかな銀河や天体などの貴重な画像をわれわれに届け続けている。
さて、衝突した2つの銀河から見れば、ここで起きているのは「死へと向かう舞い」とでも言えるものだ。GMOSの設計者の一人も、NGC 520の画像を見て「ぞっとした」と語っている。しかも、画像上のNGC 520はまだ衝突の初期段階に過ぎない。地球までの距離が1億光年ということは、この姿も1億年前のもの。現在のNGC 520は、さらに劇的な変化を遂げているに違いない。
銀河にとっては「死」でも、恒星のレベルで見れば、むしろ「ベビーブーム」状態だ。恒星同士が衝突することはなく、むしろ星間ガスが集まりやすくなるからである。NGC 520の画像の中で、薄く赤く見えている部分では急速に星が生まれている。前述の設計者はこうも語っている:「(この画像の瞬間から1億年経った)現在では、おそらく二つの銀河は完全に合体し、まったく新しい銀河が誕生しているだろう。その銀河にはたくさんの真新しい恒星があり、惑星が回っていて…そのうちの1つくらいには、生命がいるかもしれない」
衝突銀河: 複数の銀河が接近遭遇し、お互いの重力作用でそれぞれの銀河の形態や性質に大きな変化を生じる現象。場合によっては、銀河が合体してしまうケースもある。衝突に伴う重力作用で大きく変形しやすい。ただ、衝突の時間スケールは億年オーダーに渡り、観測は無理なので、コンピュータシミュレーションによるモデル研究などが盛んである。 (最新デジタル宇宙大百科より 一部抜粋)